CERNがFCCを次期加速器ビジョンとして推進

LHCの成功を背景にして、CERNは次の数10年でさらに多くの物質と宇宙の秘密を解き明かす目標のもと、FCCを軸とした次期加速器ビジョンを提案した。

 

CERNは、2040年に稼働する周長約100キロメートルのFCCを周長27kmのLHCを引き継ぐ次期加速器とすることを公表した。FCCは現在のジュネーブ近郊のLHC隣に位置する。今後90年以内にCERNの22の加盟国は、陽子-電子衝突加速器に推定90億ユーロ(102億5000万ドル)の予算を投入する。

第2段階では、同じトンネル内に超伝導陽子加速器を設置するが、そのコストは約150億ユーロとなり、2050年代後半に運転を開始する。FCCというのは大変、欲張りな、それでいて用意周到に考えられた計画で、初期にはLHCと同じように陽子ー陽子衝突実験からスタートするが、次に電子ー陽電子衝突、最終的には陽子ー電子衝突実験までを含める。最終段階でレプトンコライダーとなるが、そのときにはCLICやILCと無関係ではなくなる。ここでエネルギーフロンテイアにいることがどのような意味を持つかよくわからないが、FCCがここまでカバーするとこれから建設される加速器は影響を受けない設計は有りえない。

FCC計画は大胆そうに見えても、3つの段階に分けて最初は経験を積んだLHCの延長からスタートし、次にLEPの発展を考え、最後に開発要素の高い挑戦的な課題に望む慎重さは、逆に失敗が許されないからでもある。

 

FCCのCDRは「高エネルギー物理学におけるポストLHCの時代を拓くことができる、より強力な粒子衝突装置を建設する」という挑戦的な目標を掲げている。最終的には、FCCは現在のコライダーのエネルギー最大17TeVと比較して、最大100TeVのエネルギーを持つ超伝導陽子加速器リングとなる。

CERNのFCC計画は中国の同規模の円形加速器やCLIC、ILCなどの直線加速器計画に先駆けたものであると同時に、エネルギーフロンテイアに君臨する世界最大の加速器を欧州が保有することにかける意味は、サイエンスにおける欧州統一の象徴である。英国のEU離脱やドイツの移民問題で、欧州連合への求心力が低下するなかで、どうしても譲れないのが加速器の頂点であったようだ。

だが現実的にドイツ以外の欧州諸国はいずれも財政事情が極めて悪く、英国のEU離脱でEU科学予算は大幅に減る。しかし世界中からヒトとお金がCERNに流れ込んでくる「仕組み」がつくられていることも事実で、それがなければLHC以降の加速器建設は不可能であろう。

 

ヒトとお金が流れ込むCERN

ヒトとお金が流れ込むというのは、どいうことかというと、プロジェクトに参加しないと世界の先端から取り残されるという危機意識を持たせる設計で自発的に、世界最高レベルの「知的財産」をモノ(分担金の代わりに)の形で持ち込ませる、ということである。すなわち国際コラボレーションという形で、実際には世界が「加速器建設を分担して行う」仕組みのことである。中国はおそらく世界で最も低コストでトンネルを掘ることができる国であり、土地も国家が無償で提供するだろうが、国内主導で国際コラボレーションの範疇にはないから、FCCの代替えにも競争相手にもなりえない。

 

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