銅系高温超伝導体のスピン運動量ロッキングが発見される

1986年の銅酸化物高温超伝導体の発見以来、超伝導体材料は約30Kから始まり銅酸化物が100K以上の温度まで臨界温度は上昇したが、機構解明は道半ばである。ローレンスバークレー国立研究所(バークレイ研)の研究者たちは、放射光SARPESという新しい分光技術で銅酸化物の異常な性質についての手がかりを得ようとしている。

 

すべての電子は特定の方向を向く小さな磁石のようなものだが、ほとんどの超伝導体材料内の電子は、それらは同じ方向を向いているのではなく、高温側で熱揺らぎのため乱雑である。また超伝導状態は相図でAF状態の隣に存在する。

これまで多くの研究(理論と実験)は電子相関に焦点を当ててきたが、バークレー研の研究チームは、放射光SARPESを使って代表的な銅酸化物超伝導体Bi-2212を測定した結果、超伝導体について新たな実験結果(スピン運動量ロッキング(注1))を得た(Gotlib et al., Science 362, 1271, 2018)(下図)。

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Credit: Science

 

(注1)トポロジカル絶縁体の表面では、電子の運動方向に依存して、電子スピンの方向が決まる現象。

 

研究チームは、SARPES(スピンおよび角度分解光電子分光法)を使用して、高温銅酸化物内の電子スピンパターンを発見した。研究チームはこれまで研究が焦点としていた電子相関ではなく、最近トポロジカル絶縁体で注目されている別の電子相互作用「スピン軌道相互作用(電子の磁気モーメントの相互作用)の可能性を調べた。

研究チームはSARPES検出器を使って、広い範囲の電子を励起するためにALS放射光(10.0.1)を用い特徴的なスピンパターンが得られた(下図)。

 

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Credit: Science

 

これまで銅酸化物超伝導体は長い間、電子相関はあるがスピン軌道相互作用は無視できると考えられてきた。 今回、SARPESを用いて、Bi 2212がブリルアンゾーン中心を囲むスピン運動量ロッキングとユニットセルの異なる部分に反対向きのスピンを局在させるスピン層ロッキングが、初めて観測された。

 

この発見は、スピン軌道相互作用が無視されてきたハバードモデルに課題を投げかけ、高温超伝導状態のメカニズム解明に向けて弾みがついた。筆者の理解ではハバードモデルで説明できない事象は、例えば同位体効果や格子異常など、は無視され、理論家のほとんどがこのモデルで説明しようとしてきたが、結果的にはトポロジカル絶縁体とスピントロニクスでスピン軌道相互作用の理解が進み、フェルミオロジーと組み合わされて高温超伝導のメカニズム解明に一役かうことになった。

ALSの実験を支えたのはSSRL出身で、ALSでも数々の放射光技術開発に貢献してきたザヒード・フセインである。また高品位単結晶は日本で成長され供給されたもので、トポロジカル絶縁体のスピン運動量ロッキングの研究も日本の研究者が先行していた。超伝導の発見からBCS理論まで46年かかっているが、高温超伝導発見から今日までまだ32年である。そろそろ見通しがつきだしても良い頃なのかもしれない。

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