改良型大阪ミラーによるナノビームX線自由レーザー

X線自由電子レーザー(XFEL)は、ほぼ光速で加速された自由電子ビームによって生成される超高輝度パルスX線である。 XFELは、ピークパワー強度が非常に高いレーザービームを生成するため、X線非線形光学や蛋白質結晶構造決定、薬学・医学などの基礎研究に適している。

 

限界に挑む大阪ミラー

XFELの能力を使い切るためには、XFELビームを(通常のレーザー同様)収束して正確に試料を焦点に置くことが重要になる。レーザーは、通常、全反射ミラーを用いて集束されるが、従来のミラーは、10nm以下のX線ビームの形成には適さない。このようなミラーは必要なアパーチュアを実現できないからである。多層膜ミラーを用いてX線ビームを集束させることでこの限界を克服することができる。

それでは多層膜ミラーでKB光学系をつくればいいのでは、という話になるのだが、これが製作制度の限界を越えなくてはならない、つまり原理的には可能だが実際には不可能なレベルの製作技術なのである。

 

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Credit: Scientific Reports

 

技術的にはこれには、非常に高い製造精度が要求されるので、このような多層ミラーを製造することは困難であった。大阪大学の研究チームは、最近、XFELビームを10ナノメートル未満のサイズに集束させることができる、1nm未満の形状精度を有する超高精度多層集束ミラーを製造する新しい技術を開発した(Matsuyama et al., Scientific Reports 8: 17440, 2018)。

研究チームはこの分野で「大阪ミラー」と呼ばれる世界最高制度のミラーを開発してきた。集束XFELビームを実現するために、X線単一格子干渉計を用いた波面測定と、多層集光ミラーの直接形状補正をディファレンシャルデポジション法で行った。

 

差分成膜法でブレークスルー

研究チームはまず白金と炭素多層のマグネトロンスパッタリングによって多層集束ミラーを製作した。スパッタリングプロセスでは、1次元スキャニングステージを計算機制御した。次に作製した多層膜ミラーを2段集光系に組み込んだ。このビーム集束システムを通過した後のXFELビームの波面を、格子干渉計を使用して測定し、実際のミラー形状の意図された設計からのずれによって生じる理論上の理想から波面の収差を決定した。

最後に研究チームは、集束ミラーの形状を差分成膜法によって補正した。形状補正の前後の波面を比較したところ、XFELビームサイズが10ナノメートル未満になるまで、多層ミラーの品質を改善することができた。

 

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Credit: Scientific Reports

上図は対応する波面収差に基づいてフレネル - キルヒホフ積分を使用して計算された補正前後の集束ビーム強度。 計算には、多層設計から計算したミラーの反射率分布とその性能を事前に評価した。 (a)焦点におけるビーム強度。 計算面積= 500nm(x)×500nm(z)。 (b)光軸(y)に沿った垂直方向のビームカ集光。 計算面積=20μm(y)×500nm(z)。 (c)焦点におけるビームの断面。 垂直軸は、相対ピーク高さを明確に比較するために理想的なプロファイルの最大値によって正規化した。

この手法で製作された多層集光ミラーで、XFELを使用した最先端のX線解析の性能を改善することが期待されている。どのような光学機器でもチャンピオンデータは実用的でない場合が多い。つまり光学系のセットアップに大半の時間をかけなくてはならかったり、使うたびにビーム異なるのは困るので、ナノビームがユーザーが簡単に使えるようになることを望む。

 

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