放射光時分割X線散乱と熱分析による高分子の巨視的物性の解明

モスクワ物理技術研究所(MIPT)とロモノソフモスクワ州立大学の研究チームは、熱分析実験の検出系(熱量計)を改良し放射光時分割X線散乱を組み合わせた実験で、熱分析では解明できない半結晶性の高分子材料の巨視的物性の知見が得られることを示した(Melnikov et al., ACS Macro Lett. 7, 1426, 2018)。

 

熱分析では難しい半結晶高分子の解析

半結晶質高分子(下図)の構造は、長いポリマー鎖が結晶ラメラとして知られている規則的な折り目で部分的に配列されているが、アモルファス領域では長鎖が蛇行する。温度が変化すると、この構造は複雑な動作をするが、熱力学的挙動をは、分析の過程でポリマー構造変化で説明することができる。しかし高分子構造の変化を無視した初期の熱分析実験の結果に疑問を投げかけている。 

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Credit: ACS Macro Lett.

 

熱分析とX線分析を組み合わせる

研究チームは熱分析とX線分析を組み合わせた半結晶質ポリマーを研究する実験手法(下図)を試みた結果、臨界加熱速度は、ポリマーの結晶化温度に依存することをみいだした。

研究チームは150℃で結晶化したポリトリメチレンテレフタレート(PTT)では、毎秒500度以上で加熱すると、高分子の構造変化するのに十分な時間がないが、毎秒1度の比較的低い加熱速度では、高分子の構造変化が起こることがわかった。

 

放射光時分割X線散乱

これには、急速な温度変化に対応できる超高速熱量計の開発と、放射光と超高速X線検出器とを組み合わせたX線回折装置が必要である。ESRFに設置されている検出器は、単一光子を検出するのに十分な感度を持ち、ミリ秒スケールで材料の構造の変化を調べることが可能である。

 

Schematics of the combined ultrafast chip calorimetry micro focus X ray scattering

Credit: researchgate 

 

加熱速度に依存する巨視的挙動

異なる加熱速度で半結晶性高分子の複数の融解ピークを観察することにより、研究チームは、この挙動が材料の構造変化と複雑な熱的挙動の関係を明らかにした。さらに、高分子研究で広く使用されている分析装置の適用範囲の限界を示し、その弱点、すなわち実験中の試料構造に関する情報をX線散乱などの構造に敏感な技術を用いて補うことで半結晶質高分子の挙動および特性をよりよく理解できることを示した。

 

Top row Temperature dependent WAXS profiles corresponding to heating ramps of a PTT

Credit: researchgate

 上図の上コラム:150℃で15分間予備溶融結晶化されたPTTサンプルの加熱ランプに対応する温度依存WAXSプロファイル。 試料を1.0℃/ s(左欄)、500℃/ s(中段)および1400℃/ s(右欄)の加熱速度で走査した結果を示す。 010ピークの対応する強度およびd間隔ならびに熱流束が下の段に示されている。

 

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Credit: ACS Macro Lett.

 

ESRFのBL26Bは小角.広角X線散乱専用ステーションで高速X線検出器により時分割散乱実験ができる(下の写真)。検出器はピクセルサイズが172μのPilatus 1Mだが、実験目的によってはFReLoN 2k CCDカメラも利用できる。

 

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Credit: SAXS/WAXS (BL26B)@ESRF

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