抗生物質耐性の機構解明に成功〜ダイアモンド放射光による構造解析

抗生物質耐性は、細菌が抗生物質の攻撃に対して防御する能力であり、スーパーバグと呼ばれるこれらの耐性機構を持つ細菌は、世界中の公衆衛生上の脅威となりつつある。 ブリストル大学の研究チームは、英国の3GeV放射光ダイアモンドを用いて分子生物学的に抗生物質耐性の機構解明に挑んでいる。

 

ベータラクタマーゼの脅威

ベータラクタマーゼ(Verona Imipenemase; VIM)は、世界的な抗菌薬市場の半分以上を占める抗生物質(ペニシリンおよび関連する薬剤)を不活性化する可能性がある。

ブリストル大学の研究チームは、VIM蛋白質の分子構造の詳細を明らかにしたことで、耐性遺伝子ファミリーの産物がペニシリン系抗生物質をどのように認識し、将来の治療においてこの耐性を阻止することが可能になると期待されている。

VIM蛋白質は、最も臨床的に重要な抗生物質群であるベータラクタムを結合させ、その後それらを不活性化し、標的細菌に対する攻撃を防いで細菌を防御する。 VIMタンパク質が媒介する耐性を阻止するために、研究チームはVIM蛋白質が抗生物質にどのように結合するかに焦点を当てた(Salimraji et al., The FEBS Journal online Nov. 15, 2018)。

 

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Credit: phys.org

 

抗生物質の結合を理解するためにはVIM蛋白質を原子レベルで調べる必要がある。研究チームは英国の3GeV放射光ダイアモンドで構造解析を行った

研究チームは、VIM蛋白質ファミリーの結晶学的データを収集することにより、抗生物質結合機構の重要素を特定することができた。VIMベータラクタマーゼは、抗生物質の結合を担う領域で互いに異なる酵素ファミリーである。VIMベータラクタマーゼ結合抗生物質の解明が進めば、抗生物質耐性を打ち負かすように設計された分子に複製することが可能になる。

ダイアモンドの構造解析ビームラインを下図に示す。

 

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Credit: Diamond

下の写真は構造解析ビームラインに設置されている回折計システム。

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Credit: Diamond

 

カルパペネム系抗生物質に耐性をもつ、腸内細菌科の細菌による感染病が米国の病院で一年前と比べ、500%増加している。死亡率は50%と高く、早急な対応が必要とされる.抗生物質の過剰な使用の結果、人類は「抗生物質が全く効かない時代」に入ったのである。世界中で拡大の兆しをみせている。

 

日本でも病院で感染するMRSAは抗生物質が効かないため、院内感染が全国の病院の脅威となっている。スーパバーバグと呼ばれる細菌を一掃する分子生物学的知見の基礎は分子構造であり、地道だが構造解析の効率化が望まれる。

 

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