ILCに黄信号〜消極的な学術会議

関係者が待ち望んでいるILC予算化の年内決定に黄信号が灯った。政府決定の指針となる学術的審議を依頼されていた日本学術会議は、11月14日、「回答案」を審議した。回答は日本誘致に慎重な意見となっているこれまでの「時期尚早」をなぞる消極的な答申となる。最終的な答申は21日に政府に引き継がれ年内に正式決定される。

 

消極的な学術会議の背景

学術的な意義については国際コミュニテイの支持をとりつけているILCだが、ではなぜ学術会議が尻込みするのだろうか。すでに当初の計画は縮小され直線加速器の生命線である全長が切り詰められていることで、コンパクト化がはかられたはずなのに、という疑問を持つ人が多いのではないだろうか。

学術会議の結論は①「8,300億円とされる巨額な建設費の国際経費負担や建設に必要な人員確保の見通しが得られていない」②「環境影響や安全性の問題の説明が不十分」ということだが、①については、前後関係が逆で、参加国との折衝が進まないひとつの理由は、ホスト国であるわが国の予算(全体のおよそ1/2)が確定しないことである。

 

参加国は実行計画が確定しない限り(政府の予算化がすまない限り)実現性が低い設備に、率先して分担金拠出を確約できないのは当然である。つまりこの問題はサイクリックで予算化の先送りで国際的な計画の実現性の信憑性が薄い、ことにある。各国とも様子見状態で閉塞感が漂うのは最悪の事態である。しかし先進国の財政状態はいずれも厳しく、(インフラを含めればさらに増えるであろう)建設費の拠出は、日本はもちろん、欧米でも苦しいことは事実である。

環境影響や安全性の問題の説明が不十分、というのは技術的な問題で、改善できる問題で本質的なものではない。本来なら学術会議は早期に当初計画の問題点を指摘し、関係者に改善の機会を与えるべきだったのではないだろうか。しかしこの理由はマイナス評価をつけるための「言い訳」のような印象だ。ただし経済効果を誇張する一方でインフラ整備力に疑問が残る地元に高評価できないことも認めざるを得ない。

 

難しいCLICとの差別化

①、②以外に問題となるのは別のもっと本質的な問題である、ILCと欧州(CERN)が主導するCLICと第一フェーズの相似性である。そもそもCLICはILCと同じ組織というのも、ILCの差別化を難しくしている。ILCは日本のオリジナリテイが強いことは明らかで、JLC計画に端を発することからすれば日本が主導して予算化し建設するのは自然なのであるが、CLICとの重複性が「他を持って替えがたし」にならない理由なのだろうか。

先端科学技術の集大成である加速器の世界で、LHC以降の加速器を建設することの難しさは計り知れない。現実問題として経済的理由すなわち「雇用を含む国際経費負担」が全てならば、欧州がLHC以降にFCCとCLICの両方を建設しようとするならば、同じ問題が起きるだろう。

 

政府決断が学術会議の消極的な回答に影響されるとすれば、黄信号ととらなければならない。逆にいえば大型加速器の建設が経済効果に依存するようになったことを「危機」ととらえれば、別のアプローチ(加速器のコンパクト化、現有加速器の再利用、量子計算機シミュレーションなど)には格好の「機会」になるのかもしれない。「機会」が「好機」になるかどうか筆者にはわからないが、CLICにとってもILCにとっても転機を迎えようとしていることは間違いない。

 

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