ERLの利用について

ERLの原理

 ERL(Eneregy Recovery Linac)は超伝導加速空洞を用いた線形加速器を基盤とする放射光源である。回折限界に近いエミッタンスを持つ電子ビームを、そのエミッタンスを保持したまま周回させて、アンジュレターによって放射光を発生させる。その後、エミタンスの増大した電子ビームは、加速される電子ビームと位相をずらせて、再び線形加速器に入射し加速モードと逆位相の減速モードでエネルギーを回収し、これを加速される電子ビームの加速に利用する。最初のエネルギーまで減速した電子ビームは廃棄され、廃棄のエネルギー負荷は小さい。

 

ERLX線光源の特性

 放射光の発生は、電子貯蔵リングを用いて放射される放射光が、電子貯蔵リングの固有のエミッタンスと平衡状態にある電子ビームによって行われるのに対して、初期エミッタンスの劣化がないまま行われるので、発生する放射光は回折限界に近いコヒーレンスを持つものとなる。また、線形加速器では加速と減速が同時に進行しエネルギーの損失がないため発熱が抑制され、高い繰り返しのパルスビームを用いることができる。このため、電子ビームの加速は連続モードに近い安定した条件でおこなわれ、単ショットのSASEモードで放射が行われる自由電子X線レーザーと異なり、電子ビームの射出方向は安定している。

 

ERLX線光源の利用

(1)ERLX線光源利用の対象

 新しい光源の発展があって利用が考えられるのか、利用の要求があって新しい光源が考えられるのかはニワトリが先か卵が先かと似たような設問ではあるが、科学技術の発展は歴史的社会的背景をもつものなので、どちらも真実の一端を現わしていると言えよう。これまで、物質の科学は、一様な・周期的構造を持つものからはじまって、非一様な・非周期構造を持つものへと発展してきた。一般に、一様な・周期的構造を持つものは安定で、時間的・空間的なゆらぎは小さく、相転移点近くをのぞけばゆらぎが問題になることは少なかった。しかしながら、非一様な・非周期構造では、時間的・空間的なゆらぎが本質的である。このような物質の構造および電子状態の時間的・空間的なゆらぎをとらえることは最近の物質科学の中心課題と言っても過言ではない。さらに、物質の構造および電子状態の時間的・空間的なゆらぎには階層性が存在し、それぞれの階層に応じて空間スケールと時間スケールの異なるゆらぎが現れる。ERLX線光源は発光点が小さく回折限界に近く、空間コヒーレントレンスの高い光がえられる。非一様な・非周期構造をもつ物質の時間・空間のゆらぎは、コヒーレント散乱に反映されスペックルのゆらぎとして現れる。スペックルのゆらぎは時間・空間相関の測定によって行うことができる。

 

(2)ERLX線光源の利用技術の開発

  ERLX線光源利用技術の開発には、ERLX線光源の特性をいかして既存技術の新展開を図ることによる実験対象の拡張とデータの質の向上による新たな展開も期待される。例えば、回折限界に近い光はマイクロビームに集光することができるので、不均一系の境界領域に集光し、局所的電子状態の時間変動を、光源の短パルス性を生かしてストロボスコピックに観察することが期待できる。     

 しかしながら、ERLX線光源の特性をいかした特異な利用技術、たとえば、光源のCW特性を利用して、RF技術を駆使したロックイン的な測定によるGHzの時間分析を可能にするような強度相関の測定技術などを新規に開発することは、ERL光源の利用を広範に展開する上で欠かすことのできない取り組みと言えよう。

 

プロトタイプERL

 ERLX線光源開発の実現性の技術的開発を目的とした低エネルギーのプロトタイプ機の開発がKEKで進んでいる。技術的開発の目的は、低エミタンスの高電圧電子銃や超伝導加速空洞および電磁石などいろいろあるが、最大の目的は、超伝導加速空洞によるエネルギー回収の実証である。 また、プロトタイプ機はテラヘルツ領域のコヒーレント放射光を発生することができるので、新しいテラヘルツ光源としての利用も図られている。さらにまた、逆コンプトン散乱を利用した短パルスX線源・γ線源としての利用も図られている。放射線研究の新奇な話題は、新しいγ線源の利用計画として提案されている原子核励起の基礎研究が特記される。

 

c-ERL

 

コメント   

# Tadashi 2014年05月30日 09:04
ライナックベースでは電子ビームの安定性と持続性に不安が残りますね。蓄積リングに対して同等のビーム安定性を期待するのは難しいと思います。

また電子銃の寿命はどのくらいなのか、ビーム変動、この2点について蓄積リングと比較して優位性があるのか、ないのか、を示して欲しいと思います。
# Mr. USRJr 2014年06月03日 11:09
ショートパルスのアドバンテージは確かにすごいのですがパルス間隔はどのようになりますか。

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