時系列帯域が拡張された分子ムービーの新しい手法HARE〜PETRAIIIの成果

ハンブルグにある自由電子レーザー科学センター、超高速イメージングセンター、カナダのトロント大学、スイスのチューリッヒのETHの共同研究チームは、分子ムービーの新しい手法HARE(’Hit-and-Return’)を開発した(Schultz et al., Nature Methods, 15, 901, 2018)。

 

HAREは放射光時間分解実験を簡素化するだけでなく、多くのスナップショットを単一の実験セッションで記録できるようにした。これは、分子生物学の基礎となる時間変化シーケンス(分子ムービー)の時系列ダイナミックレンジを拡張することができる(下図)。

 

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Credit: Nature Methods

 

生命活動はダイナミックであり、その分子構築ブロックも同様で、生体分子の動きと構造変化は、その機能にとって基本的なものとなる。しかし、これらの動的な動きを分子レベルで理解することは難しい課題でもある。それらを理解するひとつの方法は、生体分子の反応が誘発され、次いでそれが反応するスナップショットを連続して記録する時間分解X線結晶学である。しかし、これらの実験は複雑なセットアップを要し非常に時間がかかる。

新しいHARE法は、生物学的に関連する反応時間スケールの研究に整合しており、ミリ秒から数秒または数分のオーダーの広い時系列ダイナミックレンジが特徴である。これらの時間スケールは、特定の生物学的機能または薬物代謝回転に関連する構造変化を明らかにするため、生物学者および製薬研究者にとって特に重要な時間スケールである。

 

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Credit: Nature Methods

 

PETRAIIIにある欧州分子生物学研究所(EMBL)のビームラインP14およびDESYのビームラインP11で得られる高強度マイクロ集束X線ビームをHARE方式で組み合わせることにより、研究チームは重要な酵素(上図)が実際に働いていることをミリ秒単位で分析した。HAREの時間スケールは30msec、752msec、2,052msecレンジにいたる広いダイナミックレンジを持っている。

 

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Credit: Nature Methods

 

HAREの成功の鍵は、以前のアプローチよりもはるかに速く全実験を行うことができることである。以前の単一の構造スナップショットは、数時間のデータ収集後にしか取得できなかったが、HARE方式では、遅延時間に関係なく、1時間あたり約1つのショットが得られる(上図)。この方法で複数のスナップショットを連続して収集することが可能になり、24時間の単一の実験で生体分子の完全な反応中に構造変化の経時変化シーケンスを記録することができる。

HARE法は、既存および今後発売される高輝度放射光源にとって大きな可能性を秘めている。測定時間が短いので、より多くの研究者が時間分解結晶学の研究を行うことができるからである。 EMBLとハンブルグ大学とともに、ドイツ教育研究省(BMBF)の支援を受けて、HARE法はすでに、新しい時間分解高分子結晶解析ステーションの標準サンプル環境としてPETRA III放射光でのEMBLビームラインP14上に組み込まれている。

 

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