ホイヘンスのメタ表面アンテナで発生する放射光(その2)〜超光速放射光

ホイヘンスのメタ表面アンテナからの放射光発生の概要についてはすでに記事に書いた。ここではその実証実験の論文(Henstridge et al., Science 362, 439, 2018)の内容について説明する。

光パルスが放射光を発生

ミシガン大学とパーデュー大学との共同研究チームは、円軌道の荷電粒子からの放射光に対応する指向性の強い電磁波を発生する超小型のデバイスを開発した。この研究のポイントは従来の磁場中の荷電粒子の運動でなく、ホイヘンスのメタ表面上で弧状に移動するフェムト秒光パルスの相互作用がシンクロトロン放射光を生成することもできることを示した点にある。

この新しい原理では、光パルスによって誘起された非線形分極によって、テラヘルツ周波数の放射光が生成される。 この原理は、強力なオンチップ光源の開発に有望である。特にIRパルスレーザーで発生するテラヘルツ帯でスキャナーで手荷物検査や癌組織検査などのイメージング分野で広範囲の応用が期待されている。 

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Credit: Science

 

研究チームは非線形結晶(LiTaO 3)の内部に半径100μmの円弧に沿って移動するサブピコ秒のパルスによってテラヘルツ光を発生した。

上図は(A)x = 0に置かれたホイヘンスのメタ表面からの入射および弾性散乱場の強度を示す。反射ビーム強度は、入射ビームのそれよりおよそ5倍小さい。 (B)LiTaO 3基板上に作製されたナノアンテナアレイの断面の走査型電子顕微鏡画像。加速ビームのイメージングのために、メタ表面を基板から約1mmのところに配置してある。アレイアンテナは、(A)に示す2Dプロットに従って、x-z平面内で加速ビームを得るように調整した。パターンはy軸に沿って周期的に繰り返され、この軸に平行な加速ビームの幅は、入射ビームの幅によって決定まる。(C)直交系ポンププローブセットアップの概略。出力は、ポンプパルス強度およびテラヘルツ放射光フィールドの時間微分の時間発展を示す画像シーケンス。結晶内部の点線の曲線は、加速ポンプパルスの軌跡を示す。

 

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Credit: Science

上図(A〜D):直交系ポンププローブセットアップの測定結果を示す2Dプロット。ポンプ強度の時間微分に比例する信号強度[Ep]2 とテラヘルツ電場ESを分離し、別々のスケールでプロットしてある。

(EからH):理論計算の結果。破線の白い曲線はポンプ強度の計算から得られた軌道である。

(I〜L):双極子によって放射される放射。赤い点で示された双極子は、最初に3π/ 4の角度の円弧に沿って伝搬し、その後、t> 2.6psの直線経路をたどる。時間の起源と双極子軌道のパラメータは、パルス伝播データと整合するように選択されている。

 

超光速放射光

t = 1.07でのパルス放射パターンは、従来のチェレンコフ放射のものに非常に似ている。すべてのパネルでt≧1.87 psで顕著に観測された2つのチェレンコフ光の観測ならびにt = 2.94および4.01 psでの内側放射枝のカスプは、本研究の放射光発生原理(超光速放射光)(注1)の特徴である。

(注1)超光速現象とは電波銀河、BL型天体、クエーサーの一部にみられる、見かけ上光速を超えた運動のこと。ここでは双極子放射の速度をメタ表面のLiTaO 3のゼロ周波数屈折率と800nmでの群屈折率との比で定義すると光速の2.86倍となる。

 

研究チームは、非線形結晶の内側に半径100マイクロメートルの円弧に沿って移動するサブピコ秒のパルスによって生成された光を曲げ、シンクロトロン放射を発生した。 このテラヘルツ帯の放射は、光パルス照射誘起される非線形偏光に起因する。 円形の軌道を中心に回転する光パルスから放射光を発生させる原理は、オンチップテラヘルツ光源に有望である。

 

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