ホイヘンスのメタ表面アンテナによる放射光発生

光の速度に近い円形軌道を運動する荷電粒子からシンクロトロン放射と呼ばれる光やX線が発生する。ミシガン大学の研究チームは、ホイヘンスのメタ表面アンテナ原理(Epstein et al., Nature Communications volume7, Article number: 10360 (2016))を実証した。

 

ホイヘンスのメタ表面

研究チームは、「ホイヘンスのメタ表面」(タンタル酸リチウム結晶の研磨面に微細な金のパターン印刷でつくられたアレイアンテナ)を、超短パルス可視光を照射して、テラヘルス領域のシンクロトロン放射光発生を目標としている。レンズと空間光変調器を使用する代わりに、単純にメタ表面にパターンを描くアレイアンテナで放射光を発生する。

下図は空洞励起ホイヘンスのメタ表面アンテナの原理。 直線光源は、側方空洞を形成する3つの伝導体(PEC)壁によって囲まれて(y '、z')に配置される。 空洞は、z = 0に位置する開口長さLのホイヘンンスのメタ表面で覆われ、指向性放射が得られる。

 

Physical configuration of a cavity excited Huygens metasurface antenna An electric line copy

Credit: Nature Comm.

 

ホイヘンスのメタ表面は、およそ1,000万個の100nmの小さなブーメラン型のアンテナ(下図)で構成されている。超短パルス光レーザーを光源としアンテナ・アレイが、光パルスを結晶内部の湾曲した軌道に沿って加速する。電気双極子の集合(正と負の電荷対の集合)である光パルス(ここではIR)を照射すると光とアレイアンテ相互作用によって、結晶内部に正負電荷の塊が発生し荷電粒子が曲げられると(放射光発生の原理同様に)指向性の電磁波が発生する。

 

acs h.assetsadobe copy

Credit: Merllin Lab

 

今回開発された装置はホイヘンスのメタ表面によるテラヘルツ領域の放射光生成の実証のための装置で。今後の改良で実験室光源としての本格的な普及が期待されている。

 

Performance of cavity excited HMS antennas Results are presented for devices with

Credit: Nature Comm.

  

結晶内の静的な周期ポテンシャルにより荷電粒子を曲げて放射光を発生させるチャネリングに対して、ホイヘンスのメタ表面は光と物質の相互作用を利用した動的な発展といえる。軍事レーダー技術として発展したアレイアンテナ技術とレーザー技術の融合で新しい光源技術に結びついた。日本物理学会をはじめとしてアカデミズムは軍事利用科学技術アレルギーがあるが、平和利用と軍事利用の境界線を引くことが難しくなってきている。

近い将来、実験室で放射光が利用できるようになれば素晴らしい。明るい未来を思い浮かべるのが難しくなっている現在だがこれによって、どれほど恩恵をもたらすのか想像もできない。

 

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