高温単分子磁石の発見

分子磁性体の動作温度は低温に限られていたため、分子磁気メモリとしての応用には時間がかかるものと考えられていた。サセックス大学の研究チームは、高温分子磁性体を開発し磁気情報記憶材料としての画期的な展開が期待されている。

 

これまでは、液体ヘリウム温度のブロッキング温度を有する単分子磁石を合成することしか報告されていない。サセックス大学の研究チームグループは、新しい単分子磁石を発表した(Guo et al., Science online Oct. 18, 2018)。液体窒素の沸点である77Kを超えるブロッキング温度(80K)を持つ世界初の単分子磁石となる。

 

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Credit: Science

 

単分子磁石は、磁場がオフになった後、比較的長い時間にわたってそれらに印加された磁場の方向を記憶することができる分子である。分子に情報を配向として「書き込む」ことで、高密度デジタル記憶媒体や量子コンピュータのマイクロプロセッサの一部など、様々な潜在的な応用が可能となる。しかし固有の記憶特性は、絶対零度よりも高々数度高い温度に加熱されると消滅することが問題であった。なおこれまでのチャンピオンデータは同じくDy原子を挿入した分子(下図)の60Kである。

 

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Credit: Nature

ブロッキング温度の問題は、克服できない固有の問題と考える研究者も多かったが、今回の研究で一気に書き込みと記録の動作温度が増大したため、実用化に向けて室温単分子磁石の開発が目標となる。ただし室温超伝導材料と同様に室温といっても動作環境を考慮すれば、マージンをとらなければならない。

蛇足になるが、こうした分子材料の開発研究に放射光分光の利用が活発化しており、オペランド実験で開発効率が飛躍的に向上している。下に評価の一例を模式的に示した。分子配向の精密な温度依存性を測定することになるが、それは直線偏光の放射光の得意な分野である。

 

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Credit: obelix.physik.uni-bielefeld.de

 

 

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