Au-Pt単原子触媒のインパクト〜CLS放射光の成果

Pt触媒は、伝統的な自動車エンジンからの有毒な排ガスを不活性化する排気ガス処理装置の鍵となる。またPt触媒はゼロエミッションの水素燃料電池の化学反応を促進する触媒でもある。

 

ダルハウジー大学を中心とした研究チームは、長寿命で高効率の白金触媒が開発したことが、自動車業界に与えるインパクトは大きい。この新しい触媒はカナダの放射光CLSを用いて開発されたAuとPtを組み合わせた単原子触媒で、Pt触媒に比べて効率が約100倍に上昇する(Duchesne et al., Nature Mater. online Sep. 24, 2018)。

またこの触媒では反応効率だけでなく、触媒寿命も改善された。通常、Pt触媒は、CO分子が結合して、Pt表面が被毒されるため、時間の経過とともに効率が低下する。Ptの活性表面積を最大にする単一原子構造と、Auを添加して合金を作ることで、効率と寿命の特性が大幅に改善された。

研究チームはAu-Pt合金でPt触媒の被毒を防ぐことができることを見出した(下図)。下図の青い球はAu原子(黄色)で囲まれたPt原子を示す。この独特な構造でPt触媒の効率が飛躍的に向上する。

 

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Credit: Nature Mater.

 

これは、2つのPt原子が並んでいると、化学反応でできたCOがそれらに強く結合し、その効率が低下する。Au格子内にPtクラスターが存在しない場合には被毒効果は消滅する。研究チームは、CLS施設と協力して、PtとAuのさまざまな組み合わせと構造を試した。

シンクロトロン放射光を用いることにより、2つの金属をエネルギーで互いに区別して評価することが可能になる。研究チームは触媒のPt含有量を減らし表面積を最大化して中毒を最小限に抑える単一原子モデルに行き着いた。

 

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Credit: Nature Mater.

 

さらに、チームは、合金を調製する化学技反応が、典型的な合金よりもPt原子の全体濃度を約10倍高くすることを見出した。合金は、通常、1%未満の非常に低い濃度の単一原子を含有する。研究チームは、7%の単一Pt原子を含む合金を作製した。高価なPtの消費量を大幅に減らすことに成功したが、将来的にはAuの代替金属で低コスト化が可能になると期待されている。

CLSは光源の性能としては、控えめで第三世代光源のカテゴリにはいるが、施設にはいくつか他の施設にはない独特の実験装置が整備されている。特に日本の精密機械メーカーの製作した実験装置やそのライバル企業のHuber社が製作した世界最大のCT装置が有名である。

後者はカナダらしく野生動物(バイソン)のCT計測のために巨大な装置になったという。光源性能で控えめでも実験装置で世界に類をみないものをつくる、そんなアプローチもありなのが放射光である。施設のあるサスカチュアン州の冬の酷寒が厳しく、"One week summer"といわれるほどである。狩猟で訪れる人が多いこの地では冬場は雪に閉ざされるが施設は活気に満ちている。

 

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Credit: CLS

 

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