大開口ラウエレンズによるマルチスライス・タイコグラフイー

ブルックヘブン国立研究所の研究チームは、従来のイメージング方法では不可能な、凹凸の激しい対象物を詳細に視覚化できる3次元X線イメージング手法を開発した。

 

NSLSII放射光の超高輝度X線を光源としてマルチスライス・タイコグラフイーと呼ばれるこの新しいイメージング技術は、電池から生物学的システムまで、様々な物質の構造的情報が得られると期待されている(下図)。

 

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Credit: Scientific Reports

 

研究チームは最先端のラウエレンズを使った世界最高の分解能のイメージングステーションをHard X-ray Nanoprobe(HXN)ビームラインに設置した。HXNでは、2Dと3Dの高解像度の画像が得られる。このステーションではその場観察やオペランド測定を組み合わせた多彩な実験が可能である。これまでのX線顕微鏡を使用する科学者は、研究できる対象のサイズと厚さ(凹凸の程度)によって制限されていた。

 

研究チームによれば、X線イメージングコミュニティが、HXNのようなイメージング専用ビームラインを活用する上で直面する大きな課題は、高解像度の画像は、材料が厚い場合、つまりX線光学系の焦点深度よりも厚い場合には困難になることだという。

研究チームは、空間分解能を犠牲にすることなく、厚いサンプルを効率よく研究する方法を開発した(Ozturk et al., Optica 5, 601, 2018)。

 

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Credit: Optica

 

従来の3次元画像を得る方法は、一連の2次元画像を収集して結合する操作を基盤としている。これらの2次元画像を得るためには、CTのようにサンプルを180度回転させる。しかしながら、大きな試料は、典型的なX線顕微鏡の限られた空間内で容易に回転することができない。この制限によって高解像度で3次元画像を再構成することが困難であった。

そこで研究チームは試料を回転させて一連の2次元投影を収集するのではなく、厚い材料を一連の薄い層に数式処理でスライスするバーチャルスライシングを思いついた。新しい方法では、X線多層膜ラウエレンズ(MLL)(下図)を用いることによって、集光効率が高いため、必要な信号を収集する時間を大幅に短縮できた。

 

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Credit: Optica

 

MLL光学系(上図)とマルチスライスのバーチャルスライシングを組み合わせることで、10ミクロン離れたナノ粒子の2つの層を可視化することができた(下図)。またこの方法は、単一の画像を得るのに必要な時間が大幅に短縮されている。

従来の方法では非常に困難なサンプル(例えば、複雑な電気化学セルを持つバッテリー)で3Dイメージングが得られると期待されている。

 

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Credit: Optica

 

NSLSIIの周辺には装置開発のエンジニアが非常に多い。個人的な印象では東海岸には製造産業が集まり、ハードウエアのエンジニア人口密度が高いことと、ブルックヘブン国立研究所は原子炉を管理していたことも関係するのではないかと思う。ビームラインにも職人気質を持ったエンジニアが多く、開発に労力を惜しまない。というより開発で雇用されているテクニシャン層が厚い。ソフトウエアも強みで、加速器グループは高度なシミュレーションソフトを使いこなして、古いラテイスから先端的な性能を引き出すのに成功している。

 

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