大強度パルスイオン源ECRISのアップグレード

核天文物理学というのは聞きなれない分野と感じる読者が多いと思う。自然界では、星を形成する核反応はしばしば、時には数十億年にわたる長い時間、高エネルギーを持ち続ける。核天文物理学はそうした天体誕生の鍵となる核反応を研究とした天文学のことで、核物理分野との境界領域である。

 

astro data gen BIG

Credit: phy.ornl

 

しかし低エネルギー実験室でこれらの反応を研究しようとしても難しいが、大強度パルスイオン源ECRISのアップグレードによって、大強度パルスイオンビーム実験が可能になりつつある。

実験原子力天体物理学、トライアングル大学原子力研究所の電子サイクロトロン共鳴イオン源(ECRIS)の6年間に及ぶ加速管とマイクロ波システムに重点を置いたアップグレードにより、高電圧電源の安定化と信号対雑音比がお大きく向上した。

 

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Credit: W. Udo Schröder 

 

アップグレード前のECRISの限界は、大強度加速器に特有の過熱による真空劣化問題、溶接部が溶融することだった。プロトンビームが残留ガスをイオン化し、実験中に有害な制動放射が発生していた。

研究チームは、デューク大学と中性子治療研究グループと協力して、2012年にアップグレードを開始した。アップグレード以来、2015年に改良されたシステムでデータが得られるようになった(Cooper et al., Rev. Sci. Instr. 89, 083301, 2018 )。

アップグレードは十分な真空を確保するために、圧縮仕様の再設計及びOリングシール、脱イオン水冷却、並列抵抗チャネルの改良で真空劣化なしに、高電圧勾配が可能になった。また交流横磁場印加は、内部に配置され不要な電子を捕獲することで、制動放射線を除去する。

高電力パルスマイクロ波システムと軸方向に調整可能なビーム取り出しで、パルスビームが得られる。これによってプロトンビームが3.5ミリアンペアに増加した。また宇宙放射線のような外部放射線源からの環境的バックグラウンド干渉も低下した。

 

研究チームはチューニングパラメータが10ミリアンペアのビーム強度を達成することを目標に、ビームエミッタンスと強度を追求していくとしている。6年にわたるアップグレードの支えとなったのは独創的な新しい設計にあるのだが、同時に資金を前広に研究グループを呼び込んだことが大きい。アップグレードに予算がつきにくいのはどの国でも同じようだが、研究コミュニテイを募って資金協力に結びつけることも加速器研究者に要求されるようになったのだろう。

 

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