環境性能に優れた窒化物太陽電池Cu3N

東京工業大学元素戦略研究センターの研究チームは、窒化銅Cu3N(n型半導体)のフッ素ドーピングによってp型伝導性の優れた半導体太陽電池材料となることを見出した(Matsuzaki et al., Adv. Mater. online June 19, 2018)。これらのn型及びp型の窒化銅半導体は、有毒物質を含んだり効果な元素を使っていた従来の太陽電池材料を置き換えて環境性能の高い実用材料となる可能性がある。

 

シリコンと対等でより低コストの新型薄膜太陽電池

近年、ペロブスカイトなどの新型薄膜太陽電池は、現在の市場を支配するシリコン太陽電池パネルと同等のエネルギー効率を持ち、シリコン材料より低コストである。これらの新型薄膜太陽電池では、特定のp型およびn型材料の薄い層を挟みこみ、効率よく発電する。薄膜太陽電池に有毒物質や希少物質を使用していても、結晶シリコン技術に比べて低コストでスケーラブルな製造が可能になった。

東京工大の研究チームは、環境性能が高い安価な薄膜太陽電池を製造するための新しい候補材料を探索し、環境に配慮した要素で構成された単純な二元化合物、銅窒化物に焦点を当てた。しかしながら、窒化ガリウム結晶に代表される窒化物半導体作製は常に困難である。

 

窒化物作製法にブレークスルー

研究者チームは、アンモニアと酸化剤ガスを用いた新しい触媒反応経路を導入することで、この難点を克服した。下図(a)の化合物は、過剰電子を有するn型導体であるが、結晶にフッ素元素を挿入した図(b)および(c)ではp型に変換された。太陽電池の鍵となるp/n接合はドーピングを行うかどうかで制御が可能で、同一母体であれば界面の整合性も良い。

 

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Credit: Adv. Mater.

 

Cu3N材料は、毒性がなく、豊富であり、したがって、CdTeおよびCIGS薄膜太陽電池の理想的な代替材料となる。窒化物作製技術は日本のお家芸と言えるが、新材料の工業化で日本の太陽電池パネル産業に再び活気がでる可能性がある。しばしばLED材料の窒化ガリウムの製造が典型とされるが、歴史的にはIII-V半導体の精密成長技術の長い歴史があり、富士通、名古屋大、NTTなどでMBE、CVDによる成長技術競争で技術が育成されて来た背景がある。

なお原子レベルのキャラクタリゼーションとして原子吸光、電子状態の理解には計算と放射光利用の光電子分光が活躍した。後者においては元素戦略研究センターと放射光施設の連携で可能になったことから、次世代放射光施設の物質科学分野の運用にはこうした連携を支援する枠組みを当初から(BL設計の時点で)考慮すべきであることはいうまでもない。

 

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