いよいよ始まったLHCアップグレード

大型加速器の一生は一般に考えられている寿命より長い。原子炉の寿命が40年だったのが50年に延長されているが、フェルミ研究所のようにコンポーネントレベルの再利用まで含めれば、加速器の寿命はそれ以上である。それでもLHCは色々な意味で別格である。エネルギーのアップグレードが済んでからも、実験スケジュールが埋まり、今回のアップグレードでさらにパワーアップしてエネルギーのみならず衝突実験のフロンテイアを譲る気配はない。

 

現在まで、LHCは高輝度アップグレードにより衝突率を上げることができ、2026年から2036年の間の運転で高ルミノシテイ実験で10倍のデータを蓄積できるようになる。ヒッグスボゾンなどの粒子の特性をより正確に測定し、宇宙の基本的構成要素を探求することが目的である。以下がアップグレードの概要と到達性能(目標)である。

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Credit: CERN

 

アップグレードの中身

アップグレードでは、電磁石、コリメータ、RFキャビティなどの1.2キロメートルに及ぶコンポーネントが交換される。約130個の新しい磁石、特にビームを集束するための24個の新しい超伝導集束四極子と4個の超伝導双極子、Crab Cavityが含まれる。 LHCで現在使用されている8.3テスラ双極子と比較して、四重極および双極子の両方が約11.5テスラの磁場となる。磁石の電源は、独立したギャラリーに移され、最大100kAを流すことができる超伝導ケーブルによって接続される。

 

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アップグレードで狙うサイエンス

HL-LHCのアップグレードにより、ヒッグスボゾンの特性をより正確に定義し、どのように生成され、どのように減衰し、どのように他の粒子と相互作用するかを測定することができる。さらに、SUSY(超対称性)、最先端の11次元理論、標準モデル以外のシナリオの検証を試みる。

これに伴い、新しい建物、トンネル、地下ギャラリー、ならびに新しい極低温装置を収容するトンネルおよびホール、電源装置および冷却・換気システムなどが設置される。つまりアプグレードと行ってもトンネルを再利用して新しい加速器(Hi-LHC)を設置するのと同等な大規模な作業となる。

 

アップグレードのボトルネック

アップグレードは最先端技術を用いることで、世界の加速器コミュニテイに貢献する。超伝導磁石や超伝導空洞など多くのボトルネックがあるが、その一つが超伝導ケーブルである。

 

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LHCの持つ特別な意味

同時に、土木建設でも周辺企業に恩恵があり、欧州産業に貢献する。この二つが整わない限り、これからの大型加速器建設は(国家事業として進める中国を除けば)、実現性は低い。またいうまでもなく国際協力で世界中に分散する研究者を集められることが約束されていなければならない。加速器建設の概念が変化した分岐点は米国のSSC計画だったのかも知れない。

いつしか加速器は国家事業で威信を示すことが色あせ、コミュニテイ共通資産としての位置付けが強くなった。LHCは人類の共有財産であることに異論を唱える人はいないのではないだろうか。

また欧州におけるLHCの意味合いは別の側面がある。LHCは欧州が共同体であることを示す格好な実例として、遠い将来の欧州連合を 目指す旗印となっていることは否定できない。移民問題で揺れ、財政難を抱え求心力が落ちている欧州にとって、サイエンスで先端にい続けることこそ共同体の価値を示す証拠であり求心力に他ならないからだ。

 

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