NSLSIIの新型高速ゴニオメータによる蛋白質構造解析の効率化

NSLS-IIにおける蛋白質結晶構造解析の高速化のために、FastForward MXゴニオメータと呼ばれる高速ゴニオメータが開発され、実験時間を数時間から数分に短縮することで構造解析の効率が大幅に向上した。

 

蛋白質結晶学は、タンパク質や他の複雑な生体分子の3次元構造を解明し、細胞内でそれらの機能を理解するために欠かせない研究手法である。しかし実験に先立って蛋白質を結晶化しなければならず、最も困難なものはしばしば微少な結晶にしか成長しない。

これらの複雑なタンパク質構造を再構成するには、数千の微結晶からX線回折データを測定し、収集したデータを重ね合わせる必要がある。これらの測定は、放射光構造解析ビームラインで高度に専門化された最新の研究機器を使っても完了するまでに数時間かかる。

 

FastForward MXゴニオメータとマイクロフォーカスビームラインを使用すれば、回折データをすばやく収集して、数分で完全なデータセットを取得できる。ここでは1ミクロンサイズの強力なX線ビームと高速ゴニオメータを組み合わせて、他の放射光施設よりもよりもはるかに高速で、非常に小さな結晶からのX線回折データを測定することができる。

 

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Credit: NSLSII

 

ゴニオメーターは25nmの精度でタンパク質結晶を位置決めすることができ、小さなX線ビームが回折測定のために微結晶を正確に照射できる。ゴニオメータは、最大100ヘルツの走査速度と750フレーム/秒のデータ取得速度を有する。

ゴニオメータの性能を実証するために、チームは2つのよく知られたタンパク質の構造、ウシトリプシン、プロテイナーゼK使用し、これらの2つの構造データを吟味した。

NSLSIIは時期的に3GeV蓄積リングの3.5世代グループに新規建設されたがラテイス設計は古く、最先端の(第4世代)光源ではないが、ビームラインの工学系や計測技術のR&Dを地道に続けた結果、最新の光源に劣らない環境を実現している。お世辞にも交通至便な立地ではないがそれでも米国東海岸のユーザーがひっきりなしに訪れ、活気のある研究施設である。エミッタンスやコヒーレンスの追求でない方向性にも活用の道がある、ことを思い知らされる。

確かに試料ダメージや検出系の応答限界に近づいていることを考えると、輝度を追求することに疑問を持つ。

NSLSIIの強みは研究所内のワークショップやビームライン、周辺機器のR&Dに関われる人材が多く、周辺の企業も多いのでR&D環境が良いことである。下図はこのゴニオメータが設置されるFMXビームライン。

 

Conceptual Design of FMX and AMX

Credit: NSLSII

 

なおこれまでマイクロビーム構造解析用にはMD3という高速ゴニオメータ(下図)が活躍していた。精度は100nm、±0.7mdeg. というスペックであった。ゴニオがピンクなのはあとで説明するようにちゃんと意味がある。

 

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Credit: ARINAX

 

また最近、ピンクビーム構造解析が話題になっていて、高速構造解析分野は一段と活気がでてきた。下の写真はピンクビーム構造解析用のゴニオメータ。

 

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Credit: Nature

 

放射光源の開発だけでなく光学系と計測系のマッチングが重要であることはいうまでもない。ただしどうしても光源が新規に建設されるときにはこうしたインフラにも予算がつきやすいので、一気に開発が進むことは確かだ。本来は地道なR&Dを継続していくべきなのだが、特に日本では中心にある大型装置の建設の影響が大きい。多くの技術者を抱えるブルックヘブン国立研究所は別として、日本で対抗できる高速ゴニオを開発するならば、企業との連携は不可欠だが、そうした実質的な協力関係が最近、希薄になったような印象を受ける。

 

 

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