第4世代以降の短パルスナノビーム診断技術

世界最先端の粒子加速器は、高輝度ビームと超短パルスの極限を追求してきた。高エネルギー衝突実験を別にしても、同じ技術が第4世代放射光の物質研究を支えているといっても過言ではない。というよりも最先端の技術を両者が共有していると考えてもよい。かつてのレーザー技術がそうであったように、ビームの極限をさらに進めるために、フェムト秒やアト秒短パルスビームの診断技術が必要になっている。

 

新しいナノビーム診断技術

バークレイ研究所の研究チームはビームを使用する実験を中断することなく、数10nmナノメートル以下のビームサイズを測定する新しい診断技術を開発した(Tarkeshian et al., Phys. Rev. X 8, 021039, 2018)。

電荷密度モニターと呼ばれるこの新しい技術は、高エネルギーおよび高磁場ビーム実験の評価基準を提供するとともに、レーザープラズマを用いる粒子加速器にも活用できる。またこの診断法はプラズマ科学から原子物理学までの分野の新しい応用につながる可能性がある。

バークレイ研究所BELLAはガスジェットによる強力なレーザービーム後に加速される粒子ビーム特性を測定する研究を行っている。強力な粒子線と低密度の中性ガスとの相互作用(粒子線の電場を介してガス原子から電子を取り除くプロセス)でプラズマおよび電子の(荷電)雲が形成されることをみいだした(下図)。

電子ビームと陽電子ビームの両方について個々のパルスの持続時間とサイズを調べ、わずか数パーセントから数十パーセントのビーム輝度の小さな変化が、電界の存在下で生成されたイオン数が10倍から数100倍増幅される。

 

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Credit: Phys. Rev. X

 

光ビームと粒子ビームの違い

このプロセスは、非常に強く集束したレーザービームまたはX線パルスがガスと相互作用して原子をイオン化するときに起こる現象と似ているが、光子と粒子線のイオン化プロセスの物理的性質には重要な違いがある。

光子ビームの場合、ビーム全体にわたって電子およびイオン(荷電粒子)が生成され、プラズマ関連電子は比較的低速であり、外部電場によって引き離されるまで、イオンの集団にぶら下がる傾向があるが、正の電荷を持つイオンは、反対方向にドリフトすることを利用し計測することができる。

電子(負電荷)または陽電子(正に荷電した)粒子ビームの場合、電場の形状はドーナツに似ており、イオンがビーム経路に最初に残っていない環状のプラズマコラムを生成する。これらの粒子線はリング状のイオンコラムを後に残すので、イオンの数、それらの速度、およびそれらの荷電状態を測定することができる。

研究チームはWARPと呼ばれるバークレイ研究所の計算機コードとVSimと呼ばれる別のコードを使用して高度なシミュレーションで、粒子と光子ビームとの相互作用をモデル化し、それに続くプラズマ関連ダイナミクスをモデル化した。

 

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Credit: Phys. Rev. X

 

このシミュレーションにより、cmからビームのサブμまでの空間と時間を拡大し、異なる時間スケールでの電子とイオンのダイナミクスを調べた。この診断システムを加速器アシステムに実装されると、ビーム性能を最適化することが可能になると期待されている。またアト秒光子パルスで研究されている基本的な原子または分子プロセスに観測される量子トンネリング現象の理解にも役立つと考えられている。

この診断技術はスイスのPaul Scherrer Institute(PSI)のSwissFEL、およびSLACのLCLS-IIのような建設中の施設にも採用される。最先端の診断技術であるがSLACでの研究開発の歴史は古く、一朝一夕に開発されたものではない。科学技術のサステイナビリテイは軽くとらえる人たちが多いが、加速器技術においては「技術開発の流れ」を人・資源の両方の観点で途絶えさせることは避けなくてはならない。

 

 

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