超薄自由流体シートの発生法と応用

これまで生体のin-vivo観察の問題点は水分子の光子吸収が大きいため、細胞内の生理活性を保った「生きたままの」状態が難しいことであった。特に赤外光や軟X線の場合、細胞損傷が起きる。SLAC国立研究所のLCLS研究チームは、自由流体(水溶液)を従来より厚みが1/100のシートにしてX線照射によっても吸収が少なく、in-vivo環境で観察できる手法を考案した(Koralek et al., Nature Comm. 9:1353, 2018)。

 

新しい方法では膜厚がX線吸収が無視できる薄さにしたことがポイントとなるが、そのために特殊なノズルが開発された。このノズルは3つのマイクロチャネルを持つ小さなガラスチップで、液体の流れは、中央チャネルを通り、両側のチャネルから流入するガスの流れで平面場の液滴が形成される。 この特殊なノズルは、フォトリソグラフィーあるいは3次元印刷で製作することができる。

 

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Credit: Nature Comm.

 

両側に流れる気体流の速度を上げると、液体の流れは幅と厚さが正確に制御できるシート状に広がる。ノズルに最も近いシートは、幅が広く薄いがノズルから遠くなるほど、シートは細く厚みが増大し最終的には円筒状の液滴流となる。

 

今回の研究で開発された液滴シートは赤外線およびX線分光法に最適な1μmから20nmの厚さに調整が可能である。こ厚みは100個程度の水分子層に相当する。この厚さの液滴シートはスペクトル全体に光子を透過させることができ、赤外、X線、電子分光法などにおいて応用分野が広い。

すでに超薄型液滴シートは真空中で数日間安定で、LCLSやFLASHなどXFEL施設とシンクロトロン光源での使用されている。

 

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Credit: Nature Comm.

 

この研究は軟X線領域のXFELによる生体のin-vivo観察の強力な手法となることが期待されている。

 

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