反陽子を持ち運べる時代

映画「天使と悪魔」を見た人はCERN(LHC)で作り出した反物質をコンテナに入れて持ち運ぶシーンを覚えているだろう。実際にそのような実験が行われることになった。CERNのPUMA(antiproton Unstable Matter Annihilation)と呼ばれるプロジェクトは10億個の反陽子を捕獲して容器に詰めて輸送可能とし、ISOLDEと呼ぶ実験に提供する。

 

放射性イオンビーム施設ISOLDEはプロトンシンクロトロンブースター(PSB)に設置されている。 現在の参加国はベルギー、CERN、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国である。

反陽子はCERNの反物質ファクトリで生成されるが、これまでと異なるのは容器に詰めて他の実験施設に輸送して実験に使われる。(E. Gibney, Nature 554, 412, 2018

反陽子の持ち出しで最も困難な点は反陽子の寿命である。反陽子を生成するのは金属標的に容姿ビームを照射するが、安定に保存するには4K以下に冷却しなければならない。(下図は閉じ込めと輸送用の容器)

 

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Credit: Nature

 

PUMA(ISOLDE)研究チームは反陽子を放射性イオンビームに衝突させて、崩壊の様子から放射性イオンを詳しく調べることを目的としている。研究チームは上図の容器で反陽子を1週間閉じ込めることができると考えている。輸送に要する時間を差し引いても、この容器で世界中の研究所に反陽子を届けることは原理的に可能となった。

CERNの反物質ファクトリはELENA(Extra Low ENergy Antiproton ring)(下図)を用いた衝突で作られる。LHCの実験が話題になることが多いCERNだがAD(Antiproton Decelerator)施設による反陽子生成実験の歴史は古い。日本からも早野教授をはじめ多くの研究者が研究に加わり、成果をあげている。

 

AD ELENA Ring image

Credit: CERN

ELENAは中でも最新の蓄積リングで、反陽子ファクトリ研究チームは今回開発すると閉じ込め容器で、世界中の研究者に反陽子を供給できるようになると期待している。写真は反陽子ファクトリ内部。

 

alpha antimatter experiment 2016

Credit: CERN

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