BASICは中国技術立国の切り札となるか

BASICとは正式名称がBeijing Advanced Sciences and Innovation Center of CASという。CASは中国科学アカデミー(Chinese Academy of Science)で、2014年に創設された北京に本部を置く大型科学技術予算の統括とイノベーションセンターの役割を持つ組織である。これまで個々に科学アカデミー傘下に置かれてきた大型施設のシナジー効果を狙うために創設された。研究施設を一元的に管理して資源配分の重複を避けて効率化するためでもある。

  

BASICが管理する分野は放射光(加速器)、中国版地球シミュレーター(スパコン)、宇宙環境、極限環境など4部門である。BASICの特徴は英国の科学評議会や日本のNEDOのように、全国共同利用施設の整備や国家プロジェクト推進など研究開発費を配分するだけでなく、青少年に科学技術教育を行い次世代を担う若い研究者層を拡充する教育的な側面も持つことである。

初期投資(建設費)が必要な場合、500億円を超えるBAPSなど大型の施設は重点配備を行うための組織がBASICなのである。CAS傘下には核融合施設(HT-7、 EAST)、上海高出力レーザー、最近完成した世界最大の電波望遠鏡FAST、大型光学望遠鏡(LAMOST)、難X線FEなど主要大型施設がある。先週打ち上げられた世界初の量子暗号通信衛星ももちろんCAS予算のプロジェクトである。

 

いくつか例をあげてBASICが技術立国を目指す中国の原動力となりつつある現状を紹介したい。

科学アカデミーに所属する124の研究所では全部で35000件のプロジェクトが進行中で、経常研究(日本では運営交付金)の予算は210億元(日本円にして約3千億円)という。中国経済は減速しつつあるが雇用費を含めたCAS予算の推移は2000年代に入ってから右肩上がりを堅持している。中国が科学技術立国を狙う原動力として科学技術予算は減らすわけにはいかない。

 

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Source: CAS

 

世界先端レベルの放射光ーBAPS

BAPS(Beijing Advanced Photon Source)は北京の高エネルギー物理学研究所に2018年から6年間で建設される第4世代(回折光源)放射光施設である。北京の施設は中国の最初の施設で老朽化して上海に建設された施設が最先端となっていたが、BASIC予算がついた。なおCAS予算は規模に関わらず獲得競争は熾烈で大型機器では世界最高の性能が予算獲得の条件になっている。

BAPSは6 GeV、周長1,296mの回折限界リングで、北京のBSRFと同じ高エネルギー物理研究所内に設置される。ラテイスは7BAが有力である。700-800mAという大電流マシンで0.1nmradエミッタンスというのも驚くスペックであるが、XFELと並行してリングが建設される。7BAの場合、最小エミッタンスはIBSを含めて60pmradとなれば世界最高輝度のマシンとなることが確実である。建設は2018年から開始され2023年か2014年にコミッショニングが予定されている。ちなみに建設費は500Mドル(日本円にし約500億円)だという。

  

世界初の量子暗号通信衛星

中国では量子暗号通信の研究が進んでおり、上海と北京の2,000kmを光回線で結ばれる他、2016年8月16日に世界初となる量子暗号通信衛星を打ち上げた。これによって光回線では制限される利用地域が中国全土に及ぶ。これによりインターネットによる通信のハッキングが不可能となる。

量子暗号の研究グループはシンガポール、英国、中国科学技術大学などから構成されている。研究開発の中心は中国科学技術大学のJiangwei教授グループである。CAS量子暗号通信技術に潤沢な資金を投入し、実用化においても先進国に追いつき最先端に位置することとなった。

打ち上げられた衛星はQKD(Quantum Key Distribution)という量子暗号化で2点間の通信を中継するが、ハッキングは原理的に不可能である。上海と北京はすでに光回線で繋がっているがこの衛星で、北京と地方都市の間の安全な通信ネットワークが完成する。通信の内容は機密性が要求される政府の外務、内務に関する情報通信、軍事施設間の情報交換であるが、順次、金融情報や個人情報通信にも使われる。中国はさらに2010年までに衛星を増やしてアジア、欧州が量子暗号通信ネットワークでカバーする構想を持っている。

 

 quantum entanglement

 Source: iflscience

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