電化率はEVの本格普及でどう変わる

少し統計は古いが2012年時点で国別の電力消費量のトップは中国(22%)、アメリカ(20%)がずば抜けて多く、3位の日本、インド、ロシアが5%でトップ2カ国の約1/4でしかない。そのほかはカナダとドイツが3%で韓国と同じ、イタリア、イギリス、フランス、ブラジルがそれぞれ2%となる。

 

電力料金と個人消費電力の密接な関係

一方、個人消費電力はカナダ、アメリカ、韓国の順で並び、日本は4位でフランス、ドイツ、ロシア、イギリス、イタリアと続く。日本の個人消費電力ではカナダと韓国を別にすれば、米国の60%で欧州各国に相当な差をつけた個人消費電力の多い国である。もちろん電力をエネルギー源とすればEVはゼロエミッションだしオール電化が都市部に浸透すれば、温暖化ガスの排出削減に効果的なのはわかっている。

ところでカナダと韓国の個人消費電力が突出している理由は寒冷な気候もあるが、主な理由は両国の電力料金が安いためである。電力中央研究所の調べでは家庭電力料金は2012年統計でカナダと韓国が世界で最も低く~7円/kWhと日本の1/3、アメリカの~10円/kWhに比べても大幅に安い。電力料金がカナダと韓国が異常に安い理由は異なるが、少なくとも電力料金が安いと個人消費が増える図式は一般的のようだ。

(注1)産業用電力料金はカナダと米国、韓国がほぼ同じで、世界で最も低く(5円/kWh)と日本の1/3以下である。

電力料金とエネルギーミックスの相関

国別の電力料金の格差は各国のエネルギー資源事情が大きく異なるためとされる。しかし2012年度統計で原発依存度が最も高い(48.8%)フランスの料金が再生可能エネルギー(風力)の割合が35%のデンマークと同じ~10円/kWhであることからすれば、エネルギーミックス(原子力発電、再生可能エネルギーの占める割合)との相関が低い根拠とされる。電力料金が低いと消費が伸びるというならば、オール電化の普及率は電力料金なのだろうか。

 

日本ではオール電化住宅が普及しつつあるが2011年度に全国平均が10%、2025年予測(富士経済(株))では20%を超えるとみられる。地域別にみると普及率に地域格差が大きく、北海道の6.4%と北陸の17.5%を別にすれば、東北(5.1%)、関東(4.2%)、中部(8.4%)、関西(9.3%)が平均を下回っている一方、中国(14.5%)、四国(12.4%)、九州(11.6%)の3地域は電化率が高い。なお北海道、北陸、四国の電化率は38%に達すると言う統計(ハウステック(株))もある。

電化率が高い地域の電力料金は安いのだろうか。下に示す地域(電力会社)ごとの電気料金比較図を見ると北海道を除けば電力料金と電化率の関係は成り立つように見える。北海道の特殊性(寒冷な気候)を考慮すると、電気料金と個人消費及び電化率の相関は高いと考えても良いのではないだろうか。

 

map copy copy

 10kW未満(余剰売電)の売電価格

東京、中部、関西は31円/kW、北海道、東北、北陸、中国、四国、沖縄は33円/kW。中国、四国は電力買い取り価格で有利な状況にある。

再生可能エネルギー導入量

2014年12月時点でトップ5は福岡、茨城、愛知、兵庫、鹿児島の順となる。1位と5位は九州なので、導入量の点でも電力料金でも高電化率に寄与している。

 

 

 

米国のEVの受注が1週間で33万台

さて将来の電化率に大きく影響するのはEV(PHV)の普及である。最近発売された米国テスラモータースのEV車は発売2日で18万台、1週間で受注が33万台に達した。テスラモータースのEVは数1000個のPC用リチウムイオンバッテリーを積み、これまで販売していた高級車では航続距離が600km以上と、日産リーフの3倍近い航続距離で人気を博していた。今回発売されたEVは航続距離を345kmに抑え、価格が3万5000ドル(補助金により日本円で300万円代)ということが人気を呼び、今回の快挙となった。(注2)ちなみにテスラ社のEV(モデル3)の予約は15万円となる。

(注2)オールアルミボデイに近い全体の98%のアルミ合金のボデイで運動性能はスポーツカー並み。オートパイロットと呼ぶ制御システムはアップグレードによって自動運転も可能になる。

 

受注数が販売数に直結することではないが、テスラ社は1車種で1兆5千億円の売り上げを見込む。(予約金は75億ドル~9,000億円。)同社はカリフォルニアにトヨタ・フォードが共同で建設した巨大工場を持っているが、それだけでは33万台を生産する能力はない。テスラ社のEVのリチウムイオンバッテリーはパナソニックのものだが、同社はネバダ州にギガファクトリーと呼ぶバッテリー工場を2014年から建設を開始している。この工場のバッテリー生産能力は年間50万台ということなので、33万台のEVバックオーダーは1年で解消する。33万台の生産に支障が出ないためには生産規模を拡大しなければならない。熱狂的とも言える今回の受注劇は同じシリコンバレーに本拠地を持つアップル社のアイフォーン人気に例えられる。まももなく10億台に達する大量の愛フォーンの生産はシャープを買収した台湾のホンファイの傘下にある中国のフォックスコンで可能になった。

ギガファクトリーは風力発電と太陽光パネルで電力をまかなう自立型工場という点でも先進性が高いが、2017年から販売されるEVが32万台という数字に驚く。トヨタプリウス(HV)でさえ2015年の年間生産台数が12万7400台であるので如何にテスラ社EVの販売が好調かが伺える。下の写真はテスラ社EVのバッテリーパック。車体いの下面に取り付けられ車の重心を低くしている。EVはバッテリー重量で車重が左右される。テスラ社のこれまでのEVは2トンを超える。航続距離が長いということはそれだけバッテリー容量が大きいということでもある。

 

2014-08-19 19.10.42-1280

Credit: TESLA Motors

 

EVの経済性

カリフォルニア州ではHVをエコ車と認めなくなったし、また最近のVW社のデーゼル車の検査不正の事件で消費者の内燃機関の購買意欲が急速に衰えた。助成金制度に後押しされてEV化が急速に進展することで、電力需要に反映され、米国の電化率も増大する傾向は避けられない。フル充電の時間が無い場合、200V40A急速充電で75kmの航続距離は遠出しなければ十分な距離である。また充電約1時間に相当するエネルギー(9.4kWh)のコストは20円/kWhの料金で189円となる。1kmあたりエネルギーコストが2.52円/kmとなる。HV車の燃費40km/lとして、ガソリン価格99円/lを仮定すると2.5円/kmで遜色がなくなる。

 

テスラ社のEVの充電は家庭でのAC200V充電の他にスーパーチャージャーと呼ばれる120kWDCチャージャーが全米で3628か所(ステーションが613か所)あって、Google Map上で最寄りのチャージャーが表示される。スパーチャージャーでは30分で270km走行分の充電が終わる。

このことはEVとHV(PHV)も経済性は同じだが、温室効果ガスゼロエミッションではHV(PHV)に勝ち目は無い。個人が自宅で夜間充電しておけば充電ステーションの整備度が普及の妨げにはならない。EVの普及が今回のテスラ社の受注のように進展するかどうかはまだ未知数であるが、少なくともEVの普及で電力需要が増大することは間違いない。

温室効果ガスを減らしながら増大する電力需要をどのようにまかなうのか、今回のEV車の驚異的な受注は国家戦略を見直すべき警鐘と捉えるべきではないだろうか。またEVだろうとHVだろうと工場の排出ガスを抑え、使用する電力の排出も問題にしないと意味がない。FCVはゼロエミッションだが燃料の水素を大量に製造するにはエネルギーが必要で、結局排出ガスが減らせないならこれも及第点は取れないことになる。新しい技術開発に期待すべきなのだろうが、正解は案外、身近な使い古されたところにあるかもしれない。全方位に目を配り最良の選択を絶やしてはいけないということなのだろう。

 

 

You have no rights to post comments

hitachihightec

hitachihightec science

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.