シェールガス減産がエネルギーミックスに与える影響

本コラムではシェールガス・オイルの急激な生産加速が続いている中で、シェールガス・オイル掘削による環境破壊のリスクについて記事を書いた。環境破壊は地震の多発、地下水汚染など顕著になりつつあるものの政府主導の生産増強に投資マネーが加わって、ブームとも言えるシェールガス・オイル生産の急激な増大が起こった。

 

 

米国の電力価格は天然ガス価格に連動するといわれる。天然ガス価格が上昇する限り石炭・原子力発電の卸売価格は安定しているので、これらの比率が高いほど卸売市場の利益が上がる。これが原子力のエネルギーミックス比率を高める一つの根拠でもあった。しかし最近の天然ガス価格の動向は米国エネルギー情報局(EIA)の統計(下の図)に明らかなように、日本と欧州の上昇傾向とは逆に米国内の天然ガス価格の値下がりが激しいことがわかる。

 

natural-gas-prices-in-us-europe-japan

Source: EIA

EIA統計によれば2012年電源別発電量で石炭、天然ガス、原子力の占める割合はそれぞれ37%、30%、19%であった。過去のデータを見ると1990年時点では天然ガスのエネルギーミックス(12%)が倍増したことになる。またこの時点の石油発電は1%であった。その米国がシェールガス掘削を政府主導と民間の投資が連動して推し進めた結果、2005年のオバマ政権から急激な増産になった(下の図)。

 

EIA 2015 AEO source of NG production

Source: EIA

 

環境保全(温室効果ガスの削減)への関心が強まると老朽化していた石炭発電への風当たりが強くなり天然ガス火力の優位性を高めた。一方で原子力発電については100基を超える辺りから半数を超える初期建設分が稼働後40年に近い老朽化し更新をめぐって天然ガスと競合することとなった。2005年に制定されたエネルギー政策法により新規原子力発電所建設が進むはずであった。

税金控除による支援や融資保証など政府支援で原発建設に有利な状況が生まれたが電力会社の動きが鈍く新規認可が下りたのは2010年(オバマ政権)になってからであった。しかし原子炉設計の高度化で採算性が困難となり住民の反対も多く新規建設が進まない。このため電力会社は現有原子炉に40年の設計寿命を60年に延長する動きが強まっている。米国の電力会社は送電網が脆弱なためその設備整備など緊急の課題を抱えていることもある。安い天然ガス火力の整備は手っ取り早い電源開発となるが、その採算性を決定する天然ガス価格の落ち込みは有利な追い風となって、天然ガスのエネルギーミックスの増大となった。

しかしブームには必ず終わりがある。天然ガス価格値下がりを支えた国内供給源のシェールガス生産に暗い影が見え始めた。シェールガス生産トップ4社の合計生産量は2015年に27.9 Bcf/d(billion cubic feet per day)ピークを迎え、12月には26.7 Bcf/dまで落ち込んだ。下のチャートが示すようにトップ4社のうち、2社は4年前の2011年にピークを迎えていたが、他の2社も遅れてピークを迎えた。

 

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Source: SRSSrocco Report

 

このことから天然ガス価格で電力価格が決まる現在の状況では、安定な原子力発電を寿命を延長した老朽原子炉の稼働率を極限にまで上げることになるとみられる。老朽化原子炉の単純な寿命延長のリスクは別項を参考にしていただきたい。

 

 

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