今も続く福島由来の放射能汚染の報道

米国のAnnual National Conference on Radiation Control(ANCRC)で福島第一事故の後、米国カリフォルニアで採取した大気試料のα線の測定値が福島第一の事故によって一時的にそれまでの1,000倍も増大したという発表があった。

 

ANCRCは50年近い歴史を持つ全米の放射線計測に関連する研究者、技術者の集会でありその影響力は大きい。またγ線の陰に隠れてα線(注1)の汚染は、取り上げられる機会が少ないが電離作用の強いため体内に取り込まれた場合の内部被曝は注意が必要であるので、真偽のほどを考察する必要はあるだろう。福島からの汚染物質が太平洋岸に流れついて魚介類を汚染したという報道が相次いだことは記憶に新しい。しかし報道の多くは信憑性が薄く福島起源と考える根拠が薄いものが多かったが、メデイアが報道し続けることによって、知識人の間にも風評が行き渡った時があった。

(注1)α粒子の起源は核種のα崩壊で、その正体は+2の電荷を持つヘリウム4の原子核である。電離作用が大きいため透過力は小さく紙1枚で止めることができる。物資の透過力が弱いのでとかく軽視されがちだが、人体への影響は無視することができない。検出器もα線を測定できるものは限られているのでγ線に比べて測定機器も少ない。α線を計測できる測定器としては簡便なサーベイメータープラスチックシンチレーターがある。

 

最近、米軍兵士やアフガン住民のU238(劣化ウラン)の体内被曝が問題になっている。これはU238のα崩壊によって6MeVのエネルギーを持つ電離作用の高いα粒子が放出されるためU238が体内に取り込まれると内部被曝を引き起こすためである。

一方でカリフォルニア州の放射性廃棄物処理場の周辺の放射能汚染は深刻化しているし、太平洋岸の原子炉から漏れ出した放射性物質の影響もあることを念頭に置いて今回の報道を整理してみよう。

 

ローレンスリバモア国立研究所が調べた2011年4月29日から5月2日の期間に採取された大気中チリの計測結果

場所      α線量

Hacenda Hts     0.2 attoCi/ml

Los Angels        0.3

Santa claria      0.1

 

2006年のリバモアの測定値は0.38femotoCi/m3でロサンゼルスの数値(0.3attoCi/ml)をfemtoCi/m3に変換すると300femtoCi/m3でこの790倍となる。原子力規制委員回の定める規制値の15倍程度となる。またブルックヘブン国立研究所ではフイルターが3femotoCi/m3を超えると(事故の可能性とみなして)再調査に入るという。

米原子力規制員会の見解はα粒子とβ粒子は容易に阻止することができ、閉じ込めることが可能なため遠隔地を汚染することはないとしている。

ANCRCで発表されたカリフォルニアで採取された大気のα粒子は福島事故後7週後であったことから、放射性物資のα崩壊起源と考えられる。U238のα崩壊の他U235、Pu239もα崩壊核種なので、原子炉からこれらの核種が大気中に放出された場合、フォールアウトが体内に取り込まれれば内部被曝を起こす。

 

日本にも福島事故直後に大気中のチリから採取されたセシウムボール(直径2ミクロン)からウランや燃料棒のZrが検出されたという分析結果があるが、ウランの放出量の正確な評価がなされていない。一方でウランとプルトニウムが米国や途中のハワイ、マリアナ諸島、福島近郊から見つかっていること(原子力規制員会資料)を考慮すると、ウランやプルトニムのα崩壊が観測されることとも矛盾しない。福島起源の放射性汚染を強調する背景には米国内で深刻化する放射能汚染があるのかもしれない。

 

 

You have no rights to post comments

hitachihightec

hitachihightec science

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.