水を浄化する新物質—放射性物質の吸着除去に有効か

原発事故などからの汚染物質のうち初期に問題になるのがヨウ素とセシウムだがどちらも体内被曝を引き起こすため、汚染と同時にそれぞれの性質に適した除去対策を講じる必要がある。ヨウ素は幼児の甲状腺癌発生率を上げ、セシウムは人体に取り込まれると骨に取り込まれて白血病ほかの癌リスクを増大させる。

 

東京都水道局は汚染物質の除去対策を以下のように説明している。

ヨウ素イオンの除去

「ヨウ素は河川水中で様々なイオンの形で存在する。イオンの形態のままでは、一般的な凝集沈殿処理や粉末活性炭処理では除去できまない。

しかし、ヨウ素は消毒用の塩素と接触することで形態が変化し、粉末活性炭によって除去されやすくなるため、粉末活性炭処理を行う前に適切な塩素処理をすることで、ヨウ素を効果的に除去することがでる。水道局ではこの方法により放射性ヨウ素の除去に努めている。」

セシウムイオンの除去

「セシウムは河川水中では粒子またはイオンの形態で存在する。ただし、セシウムイオンはプラスの電荷を帯びているため、マイナスの電荷を帯びた土壌の表面に吸着されやすく、水に溶け出しにくいという性質がある。

このため、土壌表面に付着したセシウムが、降雨により濁質とともに河川水中に流出した場合も、濁質に吸着されていることから、浄水場での処理工程の一つである凝集沈殿処理により、濁質と一緒に比較的容易に除去することができる。」

 

新しいセシウム吸着物質

韓国の研究チームがセシウムをトラップするバナジウムシリケート系の新しいゼオライト化合物をみいだした(Angewandte Chemie 53 (2014 7203.)。この物質にセシウムが強固にトラップされるため汚染物質の除去に有効と期待されている。

 

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Source: Angewandte Chemie DOI: 10.1002/anie.201402778 

 

また通常浄水に使われる活性炭の効果に関しては、「飲料水を汚染した放射性ヨウ素およびセシウムの除去対策に関する報告」によればヨウ素とセシウムの吸着特性には大きな差がある。

 

活性炭への吸着除去特性

ヨウ素は活性炭の添加量に依存して(60分間は)吸着除去率は著しく上昇し継時的に増加する。セシウムはヨウ素に比べて吸着除去率の添加量への依存性は低く活性炭による除去効果はヨウ素に大きな効果があるがセシウムは小さい。

セシウムのゼオライトへの吸着除去特性は逆にセシウムの除去に効果があるがヨウ素の吸着除去率は低い。

したがって活性炭とゼオライトの混合カラムを用いることによってヨウ素イオンとセシウムイオンの吸着除去を相補的に行うことができる。

 

包接化合物中に取り込まれた活性炭

米国コーネル大学の研究チームが新しい活性炭を含む機能性高分子を合成した(Nature (2015) doi: 10.1038/nature16185)。研究チームはシクロデキストリンという環状オリゴ糖の一種を包接性分子として活性炭ナノ粒子を取り込んだ。

 

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Source: Nature

 

シクロデキストリンは数分子のD-グルコースがグルコキシド結合で環状構造をとった分子で環の外側にあるヒドロキシル基により疎水性の0.65-0.95nmの空孔を持つ包接性分子である。3つの構造(α,β, γ)で空孔内径が異なるが今回用いられたのはβ内径0.70nmであった。

活性炭ナノ粒子をシクロデキストリンに取り込むことで、水に対する親和性が高い活性炭の保護分子ができる。このため瞬時に浄水が可能となる。この物質をゼオライトと混合カラムにすれば放射性汚染物質を高速に除去するフイルターをつくることができると期待される。

 

 

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