911(NYテロ)と311(福島第一)が変えた原発の安全基準

2015年9月から開始されたロシアの本格的な空爆と10月から始まったカスピ海からの巡行ミサイル攻撃は1年半に及ぶ米国の空爆よりも短期間であるが効果を上げているようだ。要衝も奪還されISは支配地域の14%を失った。COP21にぶつけたパリテロにより、欧州のテロが一段と強まる気配でメデイアも欧州のテロを警戒する報道が多かった。欧州のテロ警戒が一段と高まりこれまでのところ警戒された大規模なテロは起きなかった。

 

 

原発安全基準を変えた911NYテロ

しかしISの前身でもあるアルカイダが2001年に狙ったのは米国の中心、ニューヨークでありそれ以後も、米国への攻撃の意思をあらわにしている。米国へ効果的なテロの対象は原発への攻撃が考えられる。実際にニューヨークの隣のニュージャージー州の原発マップ(下図)にはスリーマイル島、ホープクリーク、オイスタークリーク、セイラムを含め多くの原発が存在している。

スリーマイル島の原発事故が大騒動になった背景には人口密集地帯に近い地理的な関係がある。

 

us northeast

Source: you do'nt know jersey

 

原発安基準の盲点-電源喪失

福島第一の事故で米国は原発の安全性に疑いを持ち、すぐに炉心損傷事故被害をシミュレーションを行った。それによると1969年に稼働したオイスタークリークで(最悪シナリオの場合)、46,000人の死傷者と80億ドルの損失と見積もられた。1977年と1979年に稼働したセイラムでは1号機だけで死傷者210,000人、被害総額135億ドル、2号機に至っては2,215,000人と150億ドルの被害をもたらすという結果がでた。このほかにも東部には多くの原発があり、原発の事故、核テロに備えた安全保障の見直しが行われることになった。

福島第一でテロ攻撃とは別の側面で原子炉の脆弱性が露呈した。主電源と予備電源、冷却系統のサボタージュによって致命的な事故を引き起こすことができることである。そのためIAEAは2011年発行の「IAEA核物質防護勧告第5版改訂(INFCIR/225/Rev.5)(注1)などにより、原発防衛対策を徹底化を求め日本でも武装警官隊が配備されることとなった。

 

(注1)主な改訂箇所は以下の通りで、911(航空機自爆テロ)と311(福島第一のメルトダウン)を念頭に置いた項目となっている。

・性能基準に基づく物理的防護システムの設計、評価及び改善

・ コンピューターセキュリテイ

・ 中央警報ステーションの非常時における基本機能継続のための冗長性

 

炉心損傷シミュレーション

東京新聞によれば日本でも1984年に日本国内の原発の核テロや戦争による攻撃を受けたときの被害予測が行われ、最悪シナリオでは被曝での死者18,000人、攻撃された原発の周囲66km圏内が居住不能となることがわかっ。しかし福島第一のSPEEDIのフォールアウト予測やメルトダウンと同様にこのことを知る人は少ない。(政府が国民がショックを受け原発反対運動が起きることを恐れたため)情報公開がなされなかったからである。

米国では911を踏まえて2009年に原子力規制委員会が大型航空機が原発建物に衝突した場合にも安全性が保証されるよう求め安全規格の変更を行った。ウエスチングハウス社の最新(第三世代)原子炉AP1000(出力1154MWe)ではこれまでのPWRより小型化した原子炉本体の周囲をコンクリートと鉄筋で強化した。

最近の原子炉の安全性は確率論的リスクアセスメントが採用され、炉心損傷頻度を数値化して評価することが多い。AP1000では年間の1基あたりの炉心損傷頻度は2.41x10-6となる。(一般に100万分の1の確率は起こり得ない事象とされている。ちなみに飛行機事故で死ぬ確率は9x10-6(NTSB)。このため人々は事故が起きて自分が犠牲者になることを考えないで飛行機に乗り込む。)しかし鉄筋コンクリートにより強化された建物でも航空機激突の衝撃に耐えられるかについては異論もあり決着がついていない。原子炉は以下の図のような進歩を遂げてきたとされるが、核燃料サイクルや安全性については原子炉本体の進化についていけてないかもしれない。

 

nuke-chart

Source: woodgate's view

 

待たれる安全性の進化

2012年にオバマ政権はジョージア州ボーグル原発の2基のAP1000に認可を出した。また中国の発注した12基のAP1000のうち4基は2008年に建設が開始されておりAP1000が稼働して第三世代原子炉の時代が始まろうとしている。しかし数値的に安全性が高いと言ってもそれを導くそれぞれの項目に前提があること、また核テロ対策の議論は未決着である。安全基準が徹底されるたびに建設コストに反映され資金不足で建設の遅れが発生するが、「IAEAのいう性能基準を炉心損傷頻度という一つの数値で代表できるのか」といった基本的な問題についても専門家の議論や検証の継続が必要である。

日本の場合、安全対策というと津波対策と地盤の評価の項目に中心が置かれ、警備が手薄であることがIAEAや米国に指摘されている。警備の問題などは徐々に改善されるだろうが、周辺住民が求める安全性はそれだけではない。結局、住民の安心には「情報の隠蔽体質」からの脱却が必要になるのではないだろうか。

 

 

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