韓国に流出したレーザーウラン濃縮技術とは

 IAEAが韓国の原子炉施設で日本の特許技術としてレーザーウラン濃縮技術が盗まれたことをみつけた。しかし公開特許の技術資料であるので現在の法体制では技術流出であっても盗み出したとはいえない。韓国は中国、ロシア同様に発展途上国に低コストで原子炉建設を請け負う輸出産業として位置付けている。最近ではUAEへの原子炉受注では、日本、フランスを退けて100億ドルという破格の融資条件と60年保証で受注を勝ち取った。インドネシア新幹線が融資の好条件で中国が受注したのと本質は似ている。

 

しかし現実にはUAEで建設中の原子炉と同型機APR1400が韓国内で認可を終えていないことやUAEの建設が遅れて延滞金を支払う必要に迫られるなど、きびしい状況にある。韓国としては原子炉と一体化した燃料供給事業をセットで売りこむためには先進技術を取り入れる必要性はあった。必要な技術なら特許料を支払って採用するのが普通だが、いまだに特許という概念が一部のアジア諸国に存在していない。

レーザー圧縮は核融合のひとつのアプローチとして知られるが、今回問題になったウラン濃縮法はどのようなものなのだろうか。イラン核問題に関しては遠心分離(注1)が問題であった。しかし濃縮工場の規模が巨大となるので効率の良い方法が模索されていた。レーザー濃縮技術とは軽水炉の燃料となる低濃縮ウランを6フッ化ウランあるいは金属ウランからつくる新技術。

(注1) nnnnnさんコメントでガス拡散->遠心分離に修正。なおイランは当初レーザー圧縮も想定していたが実用化できなかった。

 

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Photo: ATOM INFO

 

ウラン同位体の質量差に起因する原子吸光線のわずかなシフトを利用すれば特定同位体のウラン原子のみを選択的に励起することができる。励起状態のU235原子を狙ってレーザー照射を行うとU235イオンが生成する。最終的な電離エネルギーに達するために多重照射を行いエネルギーを徐々にあげるところがキーテクノロジーとなる。このための高出力レーザーには色素パルスレーザーが用いられるがコストの観点から低出力で効率良いウラン235励起が可能なレーザー波長すなわち色素の選択が重要な技術事項で、特許公開で色素分子を知ることができれば技術流出となる。

 

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Photo: pbadupws.nrc

 

ガス拡散法は一段あたりの濃縮係数が小さいためカスケードと呼ばれる直列接続で徐々に濃度を高めるものであるが、レーザー濃縮法ではU235のみを選択的に濃縮するため原理的には一段ですむ。金属ウランを用いる場合は、天然ウランを加熱してウラン蒸気を発生させ高出力レーザー光を照射してウラン235のみを正イオンに電離し、負極で収集する。1980年代後半には「レーザー濃縮技術研究組合」が認可され国と民間企業が一体となって研究開発を行った。実証試験はJAEAで1991年度に行う予定であった。実証試験を待たずレーザー濃縮法は原子力委員会で継続することが決まり、レーザー総合研究所が主要企業が参画して設立された。

高出力レーザー研究は核融合用に大阪大学が研究開発を進めており、それをウラン濃縮にも転用することで開発は加速した。一方6フッ化ウランにレーザー照射を行う方法は理研で研究開発が行われた。金属ウランを使う方法に比べて技術的課題を含むこの方法はまだ開発中といえるが、金属ウランを使うレーザー濃縮技術は多くの研究開発成果が特許として公開技術であるため、容易に技術流出が可能であった。

我が国の工業製品が核兵器製造に使われていることが問題になってから久しい。COCOM規制があるが特許公開を制限することはなされていなかったので盲点を突かれたといえる。今後は技術流出によって企業の利益ばかりでなく国家の安全保障が脅かされることを考慮して法体系が修正あるいは立法されるだろう。

 

あるいは公開特許の情報ダウンロード情報をログイン情報から調べる権利を特許所有者が持つべきなのかもしれない。著作権の無断使用に関しては現在かなりきびしくなっているはずであるが、技術情報はまだ甘いと言わざるを得ない。

 

 

 

コメント   

# nnnnn 2015年12月11日 16:42
ガス拡散法ではなく遠心分離法ですよ。

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