認可が遅れる米国次世代小型原子炉

米国内の原発は99基の軽水炉で発電量の20%を占める。しかし大部分は、老朽化が激しいため閉鎖となるが更新認可は容易ではない。理由は①安全性の基準が高くなったこと、②複雑化したため建設コストが採算性を脅かすほどになったこと、③周辺住民の理解が得られにくくなったこと、④シェールガス生産が飛躍的に増大し火力のコストが低下したことなどのためである。

 

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Photo: GREENHOUSE 

 

原発メーカーもこの事情を察知して、小型モジュール原子炉(SMR: Small Module Reactor)に中心を置く戦略を展開している。SMR(上の写真)の概念はこれまでの大型原子炉と大きく異なるものである。

通常の商用原子炉はGW(100万W)クラスが一般的で、建設コストは1基あたり2,000-3,000億円である。しかし原発メーカーの考える次世代型原子炉SMRははるかに小型で、無人運転できる数10MWクラスの「原子力バッテリー」と呼べるものである。

小型原子炉の動きは出力330MWのSMARTと呼ばれる韓国の小型原発が先行し、カザフスタンの原発受注競争に参入している。SMRは老朽化した従来型原発を置き換えるには複数必要となる出力だが、1基でも家庭用に限れば数万戸規模で電力を供給できる。実際、米国のニューメキシコ州に拠点を持つHyperion Power Generation社の提案するSMRは熱出力70MWで27MWの発電能力を持ち、20,000戸の家庭の電力をまかなうことができる。

 

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Photo: Clean Technica

 

小型原発の歴史は意外に古く、世界初の原子炉はウエスチングハウス社が原子力潜水艦ノーチラス用に製作したものだった。米国の電力不足は人口増加による家庭用電力不足が顕著で、アフリカ、中東、東欧でも小口の電力供給は地域をまとめてもこのクラスの発電能力で十分である。

HyperionのSMRの最大の特徴はウラン水素化物を燃料とすることである。これは濃縮ウランに水素を吸収させて製造する。水素は核反応によって放出される中性子を減速し、低速になった中性子は核反応に使われる。このためこの種の原発の出力は一定に保たれる。この出力一定の燃焼原理は「原子力バッテリー」と呼ぶのにふさわしい。

 

そのため原子炉内部には制御棒のような可動部分、冷却水循環システム、それらの制御系が不要となる。水素化ウランが高温になると水素がウランから放出され、減速材が減り核反応が停止する。水素は圧力容器中にあるので冷却され温度が下がれば再びウラン金属に戻り、核反応が再開される。

炉心で発生した熱は液体金属で原子炉の外に伝達されるが、液体金属の流れるパイプは水で冷却されるため、ここでも中性子の減速作用による核反応増進が行われる。(注1)この原理はロスアラモス国立研究所の研究者によって発明されたが、2006年からHyperion社に投資する企業に加わった。

(注1)ビルゲイツと東芝が共同で開発しているTWR(Traveling Wave Reactor)は高速炉だが、Hyperoin社のSMRは濃縮ウランをバッテリーのように封入して自己制御で燃焼させる。下の図は波に例えられるTWRの燃焼部分。60年かけて燃焼部分が左から右に移動していく自己制御燃焼に特徴がある。

 

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Photo: GIGAOM

 

Hyperionでは設計は次年度に完了し、すでに東ヨーロッパから6基の受注を得ているという。また発注先(電力会社)はそのほか44基の購入をオプション契約としている。またデイーゼル発電を置き換えるそのほか100基の受注が見込まれている。

設置後のサービスで新しい試みは、燃料を封入して出荷し5年後の運転終了後は送り返された原発に燃料を再充填して送り返す、というしくみである。

新型の小型原発開発に力をいれている米国エネルギー省であるが、開発続行と試験に1-2億ドルの経費がかかり、予想しなかった遅れがでると考えている。次世代型小型原発の設計が完了して原子力規制委員会に申請され、認可が下りて建設が始まっても、稼働するのにはあと10年以上時間がかかる。

小型原発が大量に世界中に出回れば核不拡散は事実上意味をなさなくなる。米国が慎重になる理由は、全く新しい原理の原子炉の安全性の確立に時間をかけたいためである。

 

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