新電力新規参入が活発に

 頑に阻まれて来た「電力自由化」はかつての「郵政民営化」を彷彿とさせる。2016年から電力自由化が始る。電力自由化すなわち電力小売り全面自由化とは私たちの社会、一般家庭にどのような変化をもたらすのであろうか。

 

 電力自由化のきっかけは311後の電力危機であった。原発停止のインパクトは凄まじく、「電力完全自由化」へ向けた規制緩和の動きが加速されていった。原発停止後、その穴埋めは火力に頼ることとなり、84%という異常なエネルギーミックス偏りが生じた。このため電気料金の値上げが企業や家計の負担になると、規制緩和がすでに始っていた電力市場にメスが入れられた。規制管ん和によって、電力会社間に価格競争を持ち込むことで、コスト低減と電力料金の低減を狙う「電力自由化」に向かうこととなった。(下図参照)

 

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Photo: Global Engineering

 

 電力会社間の価格競争だけでなく、日本の適切なエネルギーミックスと実現に向けたロードマップといった、広い視野でエネルギー問題を考え直す動きもも始っている。ここでは電力小売り全面自由化の具体的内容を簡単に紹介し、家庭や職場に与えるインパクトを考えてみたい。なおエネルギーの話題は放射線と関連は薄そうだが、原子力を独立に議論するだけで原発(再稼働)の可否を考える事はできないと考え、このコラムでとりあげることにした。

 

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Photo: Gentie Systems Service Inc.

 

 よく知られているように311以前の電力供給は電力12社に限定される卸売り業者が、2000kW以上の特別高圧、工場やビル向けの高圧、一般家庭の低圧のカテゴリーに分けて独占供給するものであった。このなかで、(供給業者の選択ができる自由化は特別高圧カテゴリのみであった。)

 国際的に高い日本の電力料金が競争力を妨げているとして、政府は段階的自由化を行なうことを決め、2004年に自由化範囲を500kW高圧までに拡大した。2005年にさらに50kW以上の受電では完全自由化となっていた。最後の関門は一般家庭向け低圧給電の完全自由化であったが、電力各社の利益を損なうとして見送られることが多かった。

 2011年の311後に原発が停止、翌年の夏場の電力危機や火力が84%の電力を供給する異常事態によって電力料金の値上げに対する国内不満が世の中に溢れ、最後のカテゴリ(一般家庭)でも規制改革が進むこととなった。

 

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Photo: Full power 

 

 2016年以降の電力小売り全面自由化で開放される市場の規模が大きいことから、新電力(旧12電力以外に新規参入した)会社の数が予想よりも増大し(注1)、様々な業者が入り乱れて電力の低価格競争が予想される。

 もうひとつのインパクトは地域性の強かった旧12電力間においても、自由化により地域の縛りがなくなったことにより、電力規格(主に周波数)さえ満たせば、地域を越えた販売が可能となることである。

 

(注1)高圧以上の電力自由化によって大規模工場、ガス会社、石油会社など発電能力を備えた業者も余剰電力を販売できるので、新電力へ参加するようになった。

 

 結果、2016年度から一戸建ての家庭は電力をどの会社からどのような形態(注2)で購入するかを選択することができるようになる。簡単にいえばこれまで通り地域の旧12電力会社と契約するか、新電力と契約するかが選べる。また住んでいる地域以外の電力会社の条件が良ければ、地域外の電力会社との契約も可能。

 またこれまでのようなメニューでなく各社のサービスや料金メニューを比較して、自由に電力会社を変更できるようになる。ちなみに新電力の契約家庭は25,000GWを越える見込みで会社数は数百社に及ぶ。マンションの新電力との一括契約(下の図)はすでに、一般的に行なわれている。簡単にいえば2016年度からの完全自由化では、各家庭がこのような契約を新電力と行なえるものである。

 

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Photo: Finance GreenWatch

 

(注2)各家庭は現在、ガスと電気をそれぞれ個別に契約している。一部の家庭はエネファームでガスから発電した電力を使ったり、太陽光発電を行なったりと、電力資源も多彩になりつつある。ガス会社がガスと電力の双方を供給したり、近隣の工場が発電した余剰電力を購入したり、(再生エネルギー発電への)援助により、エネルギーミックスを指定できるようになる可能性もある。

 

 新電力の会社数は2016年度には400社を越える見込みで、それらが一斉に低価格競争に走れば、燃料費の安い火力に電力会社が殺到し、火力に偏った異常な現状のエネルギーミックスが是正されない恐れもある。

 

 実際、関西電力は関東の火力発電所を購入したり、そのほかの電力会社も老朽化した火力発電設備の更新計画を推進している。価格競争が望ましいエネルギーミックスへ妨げにならないための施策が望まれる。

 例えば航空業界では低価格路線のLCCが業績を伸ばしつつあるが、エアライン各社もLCCと共存する多彩な顧客ニーズに対処し、差別化(高品位なサービス)で「棲み分け」がなされつつある。電力においてもそのような知恵と努力が各社に要求されるだろう。また少々脱線するが本質的な問題として「一国で2つの周波数が存在する」ことにどれだけのメリットがあるのかも、ここまで来たら手をつけたらどうだろう。

 

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