福島第一原子力発電所事故の放射能汚染は日本中に及んでいる

事故から3年以上たった今では、このようなことを言っても、気の抜けたサイダーのように、甘さの目立った、何の刺激もない話だと受け取られるかもしれません。そして、深刻な現実であるとは気づきにくいように思います。

福島第一原発事故発生後、1000 km 以上離れた長崎市においても、事故由来の放射能(セシウム134、セシウム137、銀110m)が大気中のちり(エアロゾル)から検出され、2011年4月6日~13日に捕集されたものが最大の濃度となりました(図1)。

Fig 3

 

図1. ながさき県民の森で捕集したエアロゾル中の放射能濃度

Yuan J et al. 2012, Proceedings of the 17th Hiroshima International Symposium, http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/Pub/E28/e28.pdf, P79-86より転載一部改変。Pb-210(鉛210)は大気中ラドン由来の天然の放射性核種。鉛210の壊変生成物(娘核種)はポロニウム210で、アルファ線を放出するため、肺がんの原因になると言われている。放射性セシウムがこのぐらいの濃度であれば、鉛210のほうが健康への影響が大きいと考えられる。

このときの大気の流れは図2のように推定され、大気が北風によって南下し、東風によって西に向かい、南風によって北上したため、原発周辺の放射能が長崎に飛来したと考えられます。広島でもエアロゾルから放射能が検出されたようです。当時は汚染源が原発周辺に限られていたため、このように明確な大気の軌跡(流跡線)が示されたものと思われます。


201104041000

図2. 協定世界時2011年4月4日10時(日本時間19時)に福島第一原子力発電所上空を出発した大気の流跡線。NOAA HYSPLIT - Hybrid Single Particle Lagrangian Integrated Trajectory Model(http://ready.arl.noaa.gov/HYSPLIT.php)により作成。

事故後3年以上たっても、エアロゾルからは放射能が時折検出されますが、原発周辺からの明確な流跡線は得られないようです。放射能汚染が全国的に広まった今では、いろいろなところから放射能が舞い上がり、エアロゾルに付着するのかもしれません。全国どこのコケ、地衣類を測定しても多くの場合、放射性セシウムが検出されます(遠隔地では微量)。長崎では7.5 Bq/kgでした。これが福島第一原発由来であると言えるのは、セシウム134とセシウム137の比率によります。この2つの放射性核種の割合は、事故が起こった2011年3月には、ほぼ1:1でした。セシウム134の半減期は約2年、セシウム137は約30年ですから、年月がたつほどセシウム137の割合が増えてきますが、2011年3月の量に逆算して、割合が1:1に近ければ、事故由来であろうと判断できます。中国から飛んできたのではないかという人がいますが、失礼で恥ずかしいことです。放射性セシウムを集めるのは、コケや地衣類だけというわけにはいきません。長崎で購入した食品の中にも時おり放射性セシウムが検出されます。これには九州産が表示されているものも含まれます。エアロゾルにしろ、食品にしろ、生体影響は無視できそうな微量です。検出された空気や食品の心配をしても意味ありません。だから問題ないとか、発表すると風評被害を招くからよくないとか言う人がおられます。しかし、これは警告であると受け止めるべきです。ここで自粛してしまうと、真実が伝わりません。西日本の住民の多くは、福島第一原発事故は遠いところで起こった自分たちには関係ないことと、とらえているようで、知識も乏しいようです。放射能や半減期の意味もわかっていない人が多いようです。九州は東京よりも上海の方が近く、片道3,000円で上海に行けます。福岡を除く九州人の多くは、親戚の住む地域も名古屋周辺までがほとんどで、東日本にはあまり縁がありません。逆に、中国出身の留学生、中国人の会社同僚などが多くいますから、かえって中国の方に親近感がある人も少なくないはずです。一方、原子力発電所は多数置かれており、その再稼働も全国に先駆けて行われようとしています。したがって、今後起こりうる事故の損害については特に関心を払わなければならない立場にあります。その手がかりは福島第一原発事故にあります。
福島第一原発事故後、西風の時期が多く、ほとんどの放射能が海の方に向かったこと、放射能の大部分が外部に放出されなかったことから、事故による汚染は「この程度」で済んだということができます。それでも発電所から北西方向の飯舘村などでは、かなりひどい汚染が起きました。その他の地域でも、本来ならば放射線管理区域にしなければならないほどの汚染が起こりました。今後発生するかもしれない事故の損害を見積もる場合には、福島第一原発事故に比べて、汚染の程度が十倍、百倍、千倍になることも考慮しなければなりません。1000 km離れたところでも、事故の状況によってはコケが数千 Bq/kgを越えたり、農作物の放射能濃度の管理が必要となったりする可能性があります。

 

コメント   

# 柏の住民A 2014年09月22日 08:44
ほんとに「この程度」でよかったです。その気持ちを「神風」で表現した人はひどい目にあっていますが。またキセノン同位体が3.22にスエーデンで観測され、このことが地震で配管が壊れた証拠とされています。

http://www.youtube.co/watch?v=cKjLlsGBgo4

放射能マップから飛散した汚染物質のルートを検証することが、そろそろ必要なのではないでしょうか。
# 柏の住民A 2014年09月23日 13:04
原発反対は住民投票をすれば大多数は反対でしょう。しかし政府は国際的に再稼働を宣言し、約束したから仕方が無い、と無責任な態度で住民の希望を無視しています。
いちど解散総選挙で民意を問いたい。100Bq/kgの基準値は納得できるものの、ホットスポットの測定と公開を政府は実行する責務があると思います。コケのような生物濃縮でホットスポットをなくしてください。

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