耐放射線AIロボットCentauro

欧州では放射性廃棄物の片付けや原子力緊急時の支援など、人間にとって危険な高放射線環況で作業するために、耐放射線でインテリジェントなロボットが開発されている。対照的に福島原発事故では、現場の作業者を支援するために急遽、配置された国産ロボットは役に立たなかった。強烈な放射線量を想定した開発がなされてこなかったからである。

 

廃炉への道が険しいのは、異なる型式の原子炉解体は場所によって状況が異なる放射線環境に対応して、最適な処理方法を考えなければならないためだが、現場の作業環境に対応できるロボットの運用が鍵となる。比較的難易度が低い東海発電所の廃炉手順を下図に示す。

 

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Credit: 日本原子力発電(株)

 

EUのCentauro

EUのCentauroプロジェクトでは、強力な災害対応システムを開発した(EU Research & Innovation Magazine Horison)。ロボットは基本的に安全な距離から人間によって制御されるが、自動操縦の車のようにさまざまなセンサーによってその環境を認識し、情報をオペレータに伝える。

オペレーターは、腕、手首、指の動きをロボットに伝達する「テレプレゼンススーツ」を介してロボットを制御する。オペレータが装着するヘッドマウントディスプレイによって、ロボットが自分の視点から見ているものを3Dで確認できる。

 

イタリア工科大学が開発した高さ1.5メートル、重さ93キロメートルのロボットCentauroは、アルミニウムなど軽量金属で作られていて、外側は3 Dプリントのプラスチックである。Centauroは、階段を上る、障害物をナビゲートする、電動工具を使用するなどのタスクを実行できる。ロボットは4つの関節式の脚と車輪を有している。4本の足は、二足歩行ロボットよりも安定で、腰、膝および足首で回転することができる。

 

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Credit: Centauro

 

Centauroの上半身には2本の腕があり、両手を使って物を持ち上げたり、道具やドアを操作したりできる。基本的には遠隔操作であるが、ロボットにはある程度の自律性がある。Centauroはドイツの原子力災害対応企業で試験運転され、階段を上り、破片を運び、隙間を乗り越え、ドアのロックを解除し、バルブや電動工具を操作するなどに成功した。

 

核廃棄物処理

2013年時点で、フランスはEUで最も放射性の高い廃棄物(150万立方m)を保有している。これから欧州全体で、90以上の原子炉が廃炉予定である。 2021年から2027年の予算で、欧州委員会は原子力安全に向けて約12億ユーロを投入する。

英国には500万トン近くの核廃棄物があり処分を待っている。Centauroは別に、英国のバーミンガム大学の研究チームは、高レベルの放射線を処理して核廃棄物を浄化することができるロボットを開発中である。

 

鍵を握るAIロボット

これまで、危険な環境で動作するロボットは完全に人間によって制御されていますが、この一方向のアプローチは予測不可能な形、大きさ、そして一貫性のある大量の材料をつかんで動かすには非常に時間がかかります。

新システムは自動視覚にAIを使用して、ロボットはあらゆる種類の物体を検出、認識、ピックアップする方法を知ることができる。人間のオペレーターは、遠隔操作とAIを通してロボットアームの制御をロボットと共有する。例えば、オペレータが腕を動かしてロボットが自動的に握りやすくするために手の向きを制御したり、物体を掴もうとするロボットが、その意図を人間に表示することで安全性が確保できる。

ロボットアームが表面に触れるか物体を握ると、オペレータはロボットグローブを通して接触力を感じるセンサー(アクチュエーター)付き手袋がキーテキノロジーとなる。2017年に放射性環境でAI制御システムでロボットアームの実証試験が行われた。

 

かつて国産ロボットが福島第一の作業に挑んだが、耐放射線性と機械的強度不足で役に立たなかったのは苦い経験である。経験を積んでその後、用途別に開発されたロボットたちが現場で活躍しているが、Centauroのように「人間を置き換える」半自立型AIロボットの実現には至っていない。CentauroのようなAIロボットは宇宙での利用を含めて、人間を危険な環境の作業から解放してくれる。

AIで職を奪われると恐れるのではなく、人間がAIを使いこなす必要がある。JPARCなどの大強度中性子線源施設でも活躍が期待される。トルクの出ないロボットアームと格闘する時代は過去のものとなった。ボルト締めやナット外しを楽にこなせるAIロボットができれば、ターゲット交換もどれだけ楽になるかと思う。軍事技術と諸刃の刃であることも事実だが、日本にとって福島第一は「戦場」なのである。国産AIロボットに活躍を期待したい。

 

ちなみに水道橋重工製作の陸戦型ロボット「クラタス」は人間が操縦することを除けば、構造はCentauroそっくりである。安定な自走と器用に動く両腕は人頭身とされるケンタウルスを彷彿とさせることから、Centauroの名前がついている。

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