光吸収プラズモニック金属ナノ構造による太陽熱水浄化

きれいな水を作り出す方法のひとつは、蒸留である。海水の蒸留で飲料水とする日本が輸出した大規模なプラントが、水資源が不足する国で活躍している。水を加熱する方法は数多くあるが、エネルギー効率が悪くコストが高いことが問題であった。

 

省エネルギーの加熱方法は、空気と水の界面に光を吸収する材料を使用して太陽光を集め、その光を熱に変換することである。この方法では、吸収された太陽エネルギーのすべてが、水全体を加熱するのではなく、表面近くの水を加熱するために、エネルギー効率が高い。

中国科学技術大学とカリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは、光吸収プラズモニック金属ナノ構造で太陽熱蒸気発生の効率を大幅に改善する方法を実証した(Chen et al., Nano Lett. 19, 400, 2019)。

 

プラズモニック金属ナノ構造は、光と相互作用を利用して、太陽電池を含む多くのフォトニクス用途にとって普及している新しい材料である。ここでは、太陽蒸気発生のために、高い光吸収性および低い散乱特性が役立つ。

プラズモニックナノ構造が狭い共鳴帯で、太陽スペクトルのごく一部しか吸収できなかったが、新しい研究で研究チームはプラズモニック銀ナノ粒子の狭い共鳴帯を大幅に拡大することに成功した。この改良はプラズモンカップリングと呼ばれる概念に基づくもので、2つのプラズモニックナノ粒子(下図)が互いに接近すると、それらの共鳴モードは混成し、共鳴帯域を広げより広い範囲の周波数の光を吸収するようになる(Huang et al., Scientific Reports 6: 30011, 2016)。

 

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Credit: Scientific Reports

 

研究チームは、シード成長法を使用してナノ粒子が効果を経験するのに十分に接近させた。シード成長法では、シードがランダムに分布してポリマーナノシェルの内面に固定されるので、シードがプラズモニックナノ粒子に成長するにつれて、それらは互いに接近して成長する。この方法は、空間の閉じ込めから利益を得て広帯域の光吸収を示す高密度のナノ粒子を確実にする(下図)。

 

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Credit: Nano Lett.

 

研究チームによれば計算上、95%の太陽熱蒸気発生効率を持ち、自然光を用いた評価試験で、ナノ粒子は68%の効率を達成した。製造コストを削減し、効率的な太陽熱蒸気発生を大規模システムの構築が期待される。海水の蒸留に大電力が必要だから原発の近くに整備したり、原発の大電力はそのために必要だ、という議論は過去のものとなるだろう。世の中には他にも、(古典的な水素製造プラントなど)大電力が必要な製造プロセスがあるが、電力が必要だから発電力を増やす、というのは賢くない。太陽エネルギーを使って、電力に頼らないプロセスに切り替える方が環境保全の観点からも良いに決まっている。効率の低さをナノ構造で補うことで、エネルギーを有効に使うことができる。

 

熱源に電力を利用する古典的なプラントがやがて過去のものとなる。個人レベルで太陽エネルギーで、雨水や海水から飲料水を得られる時代も遠くない。また自治体に備えておけば地震などの自然災害時にも給水車の必要がなくなるだろう。

 

なおプラズモニック金属ナノ構造については総説が詳しい。

 

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