CO2還元量子効率57%を達成〜Mn(I)触媒とCu(I)酸化還元光増感剤

東京工業大学の研究チームは、空気中のCO2還元反応の世界最高の量子収率57%を達成し、空中炭素固定の費用対効果が実用的なレベルに達したことで、困難なCO2排出量の規制に代わって空中炭素固定による脱炭素が有力な解決策となると期待されるTakeda et al., J. Am. Chem. Soc. online Dec. 2018 )。

 

空中炭素固定に向けて

CO2還元のための金属錯体光触媒系の多くは貴金属および/または希少金属錯体を使用している。希少金属(ルテニウムやレニウムなど)を利用するこれらのアプローチと比較して、地球に豊富な金属を使用することは、より環境に優しく安価である。研究チームが提案した新しいプロセスでは、(1)酸化還元光増感剤として作用する銅錯体(CuPS)と、(2)マンガン系触媒であるMn(4OMe)の2つの成分で構成される(下図)。

 

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Credit: J. Am. Chem. Soc.

 

CuPSは効率的な酸化還元光増感剤で、分解は12時間の照射後にわずか2%であった。研究チームはCO2還元反応の総量子収率は57%であり、マンガン触媒ターンオーバー数は1300以上、CO2還元の選択率は95%であった。これはCO2削減の過去最高の量子収量であり、収量は希少金属で得られる収率に匹敵する。下図はCuPSとMn錯体の分子構造。

 

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Credit: J. Am. Chem. Soc.

 

研究は、化石燃料のない未来に向かって取り組む方法論を排出ガス規制という現実的でないものから、積極的に空中炭素を固定して取り除くアプローチが現実的であることを実証した。世界的にCO2規制が厳しくなっている。しかし排気ガスの規制だけでは十分な脱炭素が困難であることが認識されつつある。

空中炭素固定が実用化すればCO2の取り込みで削減が容易になるばかりでなく、還元で得られたCOを使って燃料や化学製品の原材料に有効利用できる。脱炭素がエネルギー危機を救うことになれば一石二鳥である。そのため米国ではエネルギー省が国家プロジェクトで精力的に取り組んでいるし、日本でも光触媒や人工光合成の研究に力をいれている。

空中炭素固定で液体燃料が製造できるようになると、既存の車とインフラをそのまま流用したカーボンニュートラル燃料の世界が現実的になる。そこではEVのためのインフラや発電所増設の必要もない。空中炭素固定は理想的なリサイクルエコノミーとなる可能性を秘めている。フランスで暴徒化したデモは燃料税に反対する抗議行動が出発点であったが、燃料税の上昇は政府が化石燃料からの脱却のための政策であった。空中炭素固定の燃料はカーボンニュートラルであるので、税金を上げて国民に不便を強いる必要もない。

 

 

 

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