多孔質セパレータで何が起きているのか〜Liイオンバッテリーの課題解決にむけて

Liイオンバッテリーは我々の日常生活に欠かせない存在となっている。いくつかの未解決の問題を抱えながら、普及した珍しい製品と言える。しかしLiイオンバッテリーはエネルギー密度で圧倒的な強みを持つ反面、事故の危険性がある。さらにサイズを小さくすると、不安定になり、短絡や発火の事故につながる。

 

ワシントン大学(セントルイス)の研究チームは、これらの問題の原因を調べ、より小さく、より安全でエネルギー密度の高いLiイオンバッテリーを開発した(Bai et al., Joule online Sep. 20, 2018)。

市販のLiイオンバッテリーでは、アノード(低電圧材料のグラファイト)層と、カソードと呼ばれる高電圧材料(コバルト酸リチウム)層を分離する多孔質プラスチックのセパレータから構成される。セパレータは、電解質と呼ばれる液体で満たされ放電によってLiイオンがアノードから、液体電解質中をカソードに移動する。充電サイクルではこの逆に移動する。電極表面のウィスカーの成長はセパレーターによって阻止される。

 

省スペースを考えるときこの構造の欠点はLiイオンを含む電極材料の半分が常に空であるため、空間の半分を無駄に占有していることである。原理的にはホスト材料の常に空である部分を削ることにより、より高エネルギー密度のバッテリー(同様の出力能力を有するより小さなサイズ)を構築できる。グラファイトアノードを取り除き、Li薄膜を成長させるプロセス(充電)で、Liイオンを還元することなどがそれである。

問題は、Li金属層が均一でないことでデンドライトと呼ばれる「樹状突起」が、セパレータに浸透して短絡する可能性がある。デンドライトはセパレータに迅速に浸透する能力が高い。研究チームは、これらのLi金属アノードに成長する3つの異なるタイプの成長モードを同定した。

 

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Credit: Joule

 

高電流を使用すると、それはチップ上に構築され、木のような構造の「樹状突起」(下段)となる。下限値以下では、根から成長したウィスカー(上段)が成長する。さらにウィスカーから樹状突起への移行を「表面成長」(中段)と呼ぶ。これらの成長モードは、液体電解質と金属堆積物との間の領域における競合反応に関連している。

この研究でナノ多孔質セラミックスセパレータはウィスカーを特定の電流密度までブロックすることができ、その後表面成長がセパレーターにゆっくり浸透することが分かった。充分な電流を流すことで、電池を短絡するためにセパレータを容易にかつ非常に迅速に貫通することができる「樹状突起」(A)の形態が得られる。

Li金属アノードを用いて安全で効率的で信頼性の高いバッテリーを製造するためには、3つの成長モードを制御する必要があることがわかったため、放電条件に対応した対策を取り込むことが、より小型で安全なLiイオンバッテリー開発の指針となる。

 

この成長モードの切り替わり現象はエピタキシャル成長に関わった研究者なら誰でも経験するものである。フラックスが小さいときには完全な格子整合が可能で2D成長が実現する。しかしフラックスを増やしていくと、3D成長モードに入ってしまうのと似ている。これからのLiイオンバッテリー開発は成長モードの制御になる。

 

 

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