放射線量規制値を緩和するEPA

福島第一事故の際に1日あたりの放射線量規制値が緩和されたことは記憶に新しい。被曝の下限が書き換えられたのは、生物への放射線の影響が科学的に検証されたからではない。原子炉建物近くで作業する放射線従事者が規制で作業に支障を与えるからである。

 

米国のEPAは、放射線被曝が規制値を緩和する規則の変更に向けて準備している。政府の数十年前のガイダンスでは、有害な放射線被曝は癌リスクであるとしている。規制値変更が、原子力施設や石油・ガス掘削現場、X線検査やCTスキャンを行う医療従事者などすべての放射線従事者が健康に悪影響を受ける可能性がある。

トランプ政権はすでに、石炭火力発電所の排出ガスや車の排気を含む毒素や汚染物質に関する他の規制緩和を開始している。いわゆるLNTモデルは、事故、原子力発電所、医療センターおよび他の場所でのすべての被曝を有意とみなすため、安全管理や補償の支出が大きいためである。

 

EPAの広報担当者は、新提案の改正規制は放射線や特定の化学物質については言及していないし、EPAの方針は新規制が人体に与える影響は少ないとしている。しかし背景には、放射線被曝の規制値を緩和すると、何十億ドルも節約しかつ人間の健康にプラスの影響を与えるとの見通しを発表した。このプラスの影響とはかつて日本の原子炉建設時に、ラドン温泉を例えにして少量の放射線照射が健康に良いと宣伝したホルミシス効果と同じである。ちなみに根拠は議論がつくされたわけではない。

提案された規則は、規制当局が危険物質に関していわゆる閾値モデルを検討するよう求めている。放射能は明記されていないが、化学物質と放射線のリスクをより正しく評価すると謳われている。

 

最近3月になって、EPAの放射線影響に関するオンラインガイドラインには、現在の科学では、放射線被ばくによる何らかの癌リスクがあることが示唆されているとある。100ミリシーベルト以下の被曝であっても、胸部X線検査25回(CT胸部スキャン14回程度)に相当する量であれば、将来的には癌になるリスクはわずかに増加するとされている。

しかし、一方では100ミリシーベルトの放射線被曝は軽微で新指針では健康被害と無縁であるとしている。EPAは、提案された規制値の変更は、低線量での健康への影響に関する不確実性を認めている。しかし、2011年の福島原子力発電所事故に関する国立科学アカデミーとの共同研究では、EPAの科学的提案は、大多数の科学者によって一般に却下されたとされる。

 

米国内の核汚染物質の処理施設や原子炉の使用済み核廃棄物の不適切な保管で地下水が汚染され、住民の健康被害が増えていることから、安全性を犠牲にしても被曝者として認可しないで済む方法を米国政府が模索した結果ともとれる。日本の規制値緩和時に違和感を持った人は多かったが、原子力規制がもっとも厳しいとされてきた米国が規制値緩和に向けて走り出した。

 

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