MITの原子力エネルギー未来予測

9月3日に発表したMITエネルギーイニシアチブ(MITEI)の「炭素拘束世界における原子力エネルギーの未来」では、世界のエネルギー比率の5%を占める原子力発電の比率の伸び悩みの理由とその傾向を変える対策についての提言がまとめられている。

 

この報告書は原子力が世界の多くの地域での脱炭素化とエネルギー未来に不可欠であるとした「原発推進派」の前提に立つもので、コスパの良い原子力発電所の導入の新しい政策やビジネスモデルの導入で、停滞する原子力エネルギーの世界的なエネルギー需要への対応を可能にするとしている。下図は2015年の世界のエネルギー比率を示す。

 

world electricity production

Credit: world-nuclear.org

 

原発推進派の根拠として電力部門が深い脱炭素化の第一候補であるとしている。また世界の電力消費量は2040年までに45%増加すると予測し、低炭素シナリオから原子力を排除すれば、供給不足で電力の平均コストが劇的に上昇する可能性があるとしている。下図は2017年の世界の原子力発電能力の変遷で、近年の停滞が明らかである。

 

Nuclear Energy Production

Credit: world-nuclear.org

 

停滞する原子力の現状分析

 原子力産業が直面している課題を解決するためには、技術的、商業的、政策的な次元を包括的に分析する必要があるとし、原子力プラント建設、現在および将来の原子炉技術、ビジネスモデルおよび方針、原子炉安全規制およびライセンスについての詳細な分析結果がまとめられている。

 

鍵となる安全性と経済性

原子炉設計の標準化は、建設セクターの生産性が低い国では実行可能なコスト削減戦略となるが、それには安全機能を備えた原子炉設計の必要がある。安全機能には、高い化学的および物理的安定性を備えたコア材料や、緊急AC電源を保有し、外部電源を喪失しても安全なシステムが含まれる。

建設停滞のもう一つの要因である経済性には、政府の役割が重要で、政府の原子力支援に対する詳細なオプションが示されている。例えば、政策立案者は、既存のプラントの稼働延長で、コストの増大を回避するべきであるとしている。具体的には、米国の一部で現在行われているゼロエミッションクレジット(温室効果ガスの排出なしで発電が行われる発電所への経済的支援)が有効であるとしている。

 

国際標準化とIAEAの役割

原子力産業を有する多くの国々では、社会的、政治的、文化的に大きな違いが存在するが、原子力プログラムの安全性評価は共通性が多く、標準的な規制原則が適用できる。国際原子力機関(IAEA)は、商業用原子炉設計の国際展開を可能にし、世界的に高いレベルの安全性を標準化し、保証するために、高度な原子炉の規制要件を国際的に調整し整理することを推奨している。

原子力エネルギー比率の動向は国のエネルギー政策に強く依存するが、先進国では大型原子炉建設が遅れているが、経済的および安全性への住民の不安で、老朽化による消極的脱原発の傾向が続く。一方、より安全で経済的な小型原子炉や高温ガス炉の研究開発も加速しているが、大型原子炉を置き換えることは困難であるから、長期的には再生可能エネルギーの比率を上げざるを得ない。

 

災害の多い日本のエネルギー

9月6日未明、北海道を襲ったM6.8地震では原発と火力発電所が緊急停止して大規模停電に陥った。送電網と発電所の分散化とエネルギー比率の分散の両方が鍵となることを認識させられることになった。災害の多い日本では特に発電所の分散化が重要であり、従来の再生可能エネルギー比率と(太陽エネルギーで燃料を製造する)人工光合成の実用化などの日本独自の新エネルギー比率をあげることに異論はないだろう。

 

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