事故発生への連鎖を断ち切るには〜ヘリ事故から原発まで Part1

事故は純粋に偶然によるものは極めて少ない。最近の欧米の考え方は事故をいくつかの鍵となる因子の連鎖と考え、事故を未然に防ぐにはその連鎖を断ち切ることで対処しようという考え方が主流になっている。

ここでは最近のヘリ事故を事例として連鎖がどのように事故につながるのかを解説し、航空機事故から原発事故まで共通に関わる因子の連鎖について考えて見たい。

 

事故要因の連鎖を断ち切るという考え方

まず事故要因の連鎖の時間スケールは極めて長期にわたるものも少なくないが、多くの場合は、事故当日もしくは事故直前の行動による場合が多い。不幸にして連鎖が発生した場合にも連続するプロセスの中に、ほとんどの場合、運命を分ける分岐点があり、適切なリスク回避行動が取られたなら、紙一重で事故を未然に防いだり、被害を軽微にとどめることが可能なのである。

下の図で事故が起るにはいくつものセキュリテイホールをくぐり抜けた場合に限られる。穴の空いた事故要因はスイスチーズのようなので、連鎖を表現したスイスチーズモデルと呼ぶ。この考え方によれば最後のセキュリテイホールを突破して事故になるのは極めて確率が低く、途中で事故を防ぐ機会は十分あると考える。

swiss cheese model copy

Credit: patientsafetybydesign

 

事故原因の連鎖と時系列、過失の関わり方は徹底した事故調査委員会があたる。海外の事故調査委員会は国土交通省の資料に詳しい。例えば米国では航空機に限らず、交通機関の事故調査の権限は大統領直属のNTSB(National Transportation Safety Board)が有しており、事故発生と同時にGO TEAMと呼ばれる調査チームが現地入りして、事故調査に入る。NTSBの場合は事故以前に事故調査の権限を持つ専門の部局があるので、事故調査に取り掛かる時間ロスがない。事故後に事故調を立ち上げることでは現場保全や証拠品の収集の効率が悪い。

 

群馬県の防災ヘリコプター墜落事故

事例として 群馬県の防災ヘリコプターが墜落し9人が死亡した事故 を取りあげる。 ヘリの飛行ルートが飛行計画と異なっていたことも判明し、国交省は航空法違反の疑いがあるとしており、県のずさんな運航管理体制が明らかになった。結論を言えばこの事故はオペレーションミスと考えられる面がある。事故要因の連鎖を推定してみるとこうなる。

急に霧がでて、前方が山麓と考え、右旋回すれば回避出来ると考え旋回したところ、急旋回でメインローターの空気抵抗でパワーが下がったのでパワーを上げる必要がでたが、旋回、パワー、山で注意すべき事が多くなり、方位計を見誤って山麓に激突したのではないかと考えられる。

 

なおこの時、9名が登場したためペイロードが多く、エンジンパワーの落ちるのが早かったはずである。また霧に包まれてホワイトアウトで方向感覚が無くなったと考えられる。事故要因の連鎖を断ち切る機会はあった。まず静止して山の最高峰位置以上に上昇するべきである。そこで、霧が晴れていれば良いが、まだ霧の中でも、高度計とGPSで安全な場所までその場で上昇して、山頂より高い高度を維持してから移動するべきであったのではないだろうかと考えられる。

 

ヘリ操縦の基本的な難しさ

ヘリはテール部分が思ってる以上に長く、機体の後部位置の認識が低くなりやすい。ホバリング時は、特にメインロータの回転と逆方向の力がかかるようにテールロータを制御しているが(右側のアンチトルクペダルで押し込んでいるが、ホバリング時は飛行時よりアンチトルクペダルにかかる踏力が増える)、少しでも緩めると簡単にメインロータの軸上を中心に回転してしまう。つまり、コックピットを中心として回転するので、テールローターまでの長さを考慮していないと木々にテールロータを引掛けることになりやすい。

また、ヘリコプターでは乗員を含めた搭載重量が決まっており、海外の観光ヘリコプターでは一人一人体重や手荷物を測定するところもあるほど、重量にはシビア―である。

本来は禁止のはずであるが業務飛行と、内輪の遊覧飛行を兼ねる場合が多いと言われている。調布飛行場の墜落事故も、遊覧飛行は禁止されていたのが、実際は遊覧飛行で事故を起こしている。このようなことが常態化しているとすれば事故につながるリスクが高まる。ロシアの民間旅客機が家族の子供をコックピットに入れて事故になった場合が有名である。

旅客機などの大型機では、操縦士と副操縦士の2名体制である。軽飛行機やヘリコプターの日本国内の規約がわからないが、アメリカの遊覧ヘリコプターではパイロット1名の場合がある。もし、今回の事故機で操縦士が1名であった場合は、2名体制にする必要があるのではないかと思う。小型機ということで、コスト優先になり操縦士が1名体制になっているのであれば、見直す必要があるのではないだろうか。

 

背景にある間接的事故要因

ヘリは整備が難しく、機体数の割に、整備士の人数が少ない。大手でも、専属の整備士は抱えていないのが実情である。通常は、パイロットがオイル、燃料、外観チェックする。エンジン始動後はコントロール系、計器のチェックをして、最後はエンジンの燃料をカットして、メインローターの回転が下がるのを確認してから、エンジン出力をあげて、エンジンの回転数とメインローターの回転数が一致するのを確認してから飛ぶ。エンジンに異常があればテスト時に負荷を掛けているので事前に把握できるはずである。整備も手順書がに沿って面倒でも確認しながら行うべきである。


ヘリコプターは基本的に有視界飛行で計器飛行が禁止されている。航空機には地上高センサーがあって地上に近づくと警告を発するが、ヘリは地上近くを飛行したり垂直降下することが多いので、パイロットはうるさく思い警告装置を切ってしまう可能性がある。

ヘリコプターでも航空自衛隊では、機体の限界点を知るための訓練もしているようであるが、民間機では必要でないため、訓練はない。山岳救助・海難救助のヘリコプターパイロットの技量は非常に高いと実感しているが、一度は航空自衛隊の協力下で機体の限界点まで体験する必要があるのではないだろうかと考える。

 

ニュースでは飛行時間の長いベテランパイロットと報道することが多い。また航空会社の責任が明白でも報道を自省するきらいがある。慣れからの人為的事故が多いようにも感じることが多くなった。ベテランパイロットほど注意する必要があるのかもしれない。

 

今回のヘリ事故では当初の飛行ルートに従わなかったずさんな飛行計画が批判されている。またここで書いたように突然の霧でホワイトアウトしてもエンジントラブルでなければ、リスク回避ができたはずである。誤った緊急事対応が事故原因だとすれば、人災と言わざるを得ないが、働き盛りの防災隊員を失ったことで、今後の救助活動に影響を及ぼすことになる恐れがある。

最近、海外を含め航空機事故が増えているように思える。航空関係に従事している方々には、それぞれ事故発生のシチュエーションなどは異なるが、人命という点では改めて1985年8月12日の日航機123便の事故について考えて欲しいと願うところであります。

事故発生への連鎖を断ち切るには〜ヘリ事故から原発まで Part2

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