黒リンナノシートによる高効率水素発生

ようやく日本も重い腰を上げ再生可能エネルギーを主電源とする方向に舵をきりつつある。それでも電源種目として原子力は排ガス規制のために残すとしているが、他の先進国同様に原子炉の新規建設計画が挫折している。再生可能エネルギーの柱は太陽光と風力だが、ベース電源とするには季節や天候に依存した発電量を貯蔵することと抱き合わせる必要がある。

 

エネルギー貯蔵に最適な水素

エネルギー貯蔵の観点からみれば、エネルギー需要としては蓄電あるいは水素が候補となるが、誰が考えてもクリーンで地球環境に優しい点で理想的なのは水素である。もちろんエネルギー密度で化石燃料に劣るとかインフラ整備にコスト高となるなどの批判もあるが、本命となるのは粉末触媒を使用した太陽光による水分解は、普及すれば最も経済的であると考えられている。水素製造の工業化の採算性を決めるエネルギー変換効率は15%程度とされる。

水素発生のプロセスを考えるとき、困難な理由は水素発生が4電子駆動の酸化半反応であること。一般には太陽光の吸収が不完全で、せっかく生成したキャリアが捕獲されてしまうため、反応速度が遅く効率が低い点である。実際に、光触媒のエネルギー効率は2%どまりで、採算性の限界より1桁も低い。

 

黒リンナノシート触媒

中国の太原理工大学の研究チームはアモルファスリン化コバルト(Co-P)に担持した黒リンナノシートが光触媒に求められる高光吸収とキャリア寿命の要求をクリアできることをみいだした(Tian et al., Nature Comm. 9: 1397, 2018)。

これらの問題を同時に解決することができる。黒リンナノシート触媒は、電解質なし(pH6.8)、バイアスなしで、キャリア(ホール)補足剤なしで水素を発生する。波長430nmで量子効率42.55%と353Kでのエネルギー変換効率5.4%以上を達成した。

 

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Credit: Nature Comm.

この光触媒活性は、①黒リンナノシートによる太陽エネルギー効率的な利用(太陽エネルギーの約75%)と②アモルファスCo-Pによる高キャリア分離によるところが大きい。

 

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Credit: Nature Comm.

 

これまでの光触媒のエネルギー変換効率は東大グループの2%であったが、この研究によって黒リン系材料を太陽水素製造の触媒として使うことで効率が5.4%になった。15%の壁も視野に入ったことで、ハイブリッド材料設計による効率的な太陽光から化学エネルギーへの変換が現実的になった。

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