コロイド・テンプレートでつくる新型触媒〜ナノ粒子からクラスターへ

Au、Agなど貴金属触媒は強力な酸化触媒として知られる。例えばCOの酸化反応など。従来のナノ触媒は貴金属同士が凝縮するためサイズが大きくなり担持物質との相互作用も弱いため、活性が低い欠点があった。

 

ナノ粒子からクラスターへ向かう触媒構造

そこでナノ粒子の発想から担持物質をナノ粒子化してその表面に、貴金属クラスターを分散する手法が考案された。Auのクラスター触媒への研究などに代表されるクラスター触媒の研究は近年、活発化し触媒性能の向上とともに寿命やコストの観点でも大きな進展がみられる。

 

ハーバード・ワイス研究所の研究チームは新たな触媒設計の指針となる新しいクラスター触媒の概念を発表した(Shirman et al., Chemistry-A European Journal online Novenber 14, 2017)。これまで表面積の増大が触媒活性の向上に役立つとされ、金属粒子のダウンサイズが指針となりナノ粒子を多孔質シリカなどの担持物質に固定する触媒が主流であった。

ナノ粒子触媒は活性の観点のみでなく、貴金属触媒ではコストの観点で魅力的なアプローチでもあったため、金属触媒の主流となるのに時間はかからなかった。しかしナノ粒子同士が凝集するため粒径が大きくなり当初ナノ粒子に期待された反応活性が阻害される問題が生じた。そこで近年、ナノ粒子からクラスターへとサイズを減らしたり、一個の原子を用いる単一原子触媒の研究が盛んになった。

 

新型クラスター触媒構造

研究チームはAg-Au合金を対象として、ナノ粒子とポリマーコロイドを混合して堆積させることで、多孔質シリカ表面に金属クラスターを分散する新型触媒の製造方法を開発した。新しいクラスター触媒構造は多孔質ナノ触媒(Ag3Au97)に比べてアルコールからエステルを製造する触媒活性が飛躍的に向上している。

 

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Credit: Wyss Institute at Harvard University

 

新型触媒構造はナノ粒子表面にクラスターを分散させた構造の逆で多孔質担持物質の孔の内側に分散したものである。反応ガスをそのまま流せる多孔質材料は触媒の実装に便利な構造である。

現状ではクラスター触媒や単一原子触媒の実空間イメージングはHRTEMやAPT(Atom Probe Tomography)が圧倒的に有利な観測手法だが、回折限界放射光リングが実現すれば位相イメージングが有力な研究手法となる。また反応機構や電子状態の解析にはオペランド実験と軟X線分光法の組み合わせが強力な研究手法となる。

 

ここで想像力をたくましくしてみると、水をここで紹介したような多孔質クラスター触媒を流すと水素が製造できるようになったらどうだろうか。現状では1cm角のフィルムが得られるというが、大面積フイルムが製造できるようになれば光触媒こうラスターを分散させた多孔質シリカに水を流して、水素を製造できる。

毎日運転して貯まった水素から燃料電池で各家庭で電力を得られる未来が待ち遠しくなるのではないだろうか。

水道水から水素が製造されるようになれば、誰でも安価にエネルギーを得ることができ、エネルギー枯渇も、大気汚染も、エネルギーを巡る紛争もなくなる。そのような未来につながる新型触媒構造に期待したい。

 

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