2050年までに再生可能エネルギー比率100%は可能か

今年の2月に関東地区が最近では珍しい大雪に見舞われた際の停電は奇妙なものであった。瞬間停電でも長期にわたる停電でもなく短時間で復旧する停電が電力需要の多い首都圏で、繰り返し発生したのである。また短時間の停電と言っても一定時間内に復旧しては停電し、あたかも停電というより接触不良のような過度的な現象が起きた。

 

大雪による奇妙な短時間停電と復旧後の不安定さ

これは停電復旧の過程で異常が起きた変電所を特定する過程で、何度も停電してしまうのは変電所から順に送電しながら異常個所を調べていく作業で、復旧しながら範囲を広げていくと異常箇所を含む地域に送電した瞬間、変電所の管轄地域全体が停電してしまうことによると説明されている。しかしこれは降雪の重みで送電線が切断されるなど雪による直接的な送電網の被害が原因で、復旧工事で完全に元に戻るものである。

 

一方で降雪による停電とは別に電力需要がピークに達して供給が追いつかなくなることで首都圏が大停電になる一歩手前だったとして、余裕のない電力送電のキャパシテイを太陽光依存によるとして、再生可能エネルギー依存を批判するメデイアもある。そのようなメデイアは大抵、再生可能エネルギー比率を高くすると首都圏が大停電に陥るから、安定な電源として原子力を推奨する立場であることが多い。

日本の夏場と冬場の電力消費が供給のピーク能力に近いことは今に始まったわけではない。先進国がこぞってエネルギー需要が倍増する2050年までに、再生可能エネルギー比率を上げる、あるいは比率100%を達成する方法論が話題となる時代に、再生可能エネルギーがベース電源として不適であると決めつける不毛の議論が続いている。

 

 

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2050年までの再生可能エネルギー比率100%とするロードマップ

 

再生可能エネルギーがベース電源に不適とした意見の多くは風力や太陽光の季節や気象に強く依存した時間的変動特性をもとにしたものである。確かに風まかせ、雲量や日照時間に限定される太陽光では、不安定な出力はベース電源となり得ないとする意見も納得できる。しかし不安定な電源でも蓄電や化学エネルギーに変換して貯蔵することが可能なので、これらの技術発展を考慮すれば安定性のみにこだわる理由もない。スタンフォード大学を中心とする研究チームは最新の研究で、再生可能エネルギーで世界20地域139カ国の電力需要を賄えるとして、そのためのロードマップを発表した(Jacobson et al., Renewable Energy online Feb. 3, 2018)。

 

再生可能エネルギー比率100%の実現には風力、水力、太陽エネルギーによる発電と蓄電を増え続けるエネルギー需要に適応させることである。研究チームはこのため世界139カ国を20地域に分けて、2050-2054年の30秒間隔の電力需要の変動を取り込んだ地球モデルを構築し、エネルギー貯蔵技術の普及を考慮してシミュレーションを行った結果、上図のロードマップに沿って計画的に再生可能エネルギー比率を高め、最終的にエネルギー比率を自然エネルギー100%とすることは可能であるとの結論を得た。

 

スタンフォード大のシナリオへの批判

再生可能エネルギー比率が100%になるかどうか、また仮に実現したとしてもそれがエネルギー需要をどこまで満足できるかについては意見の分かれるところである。スタンフォード大学の研究チームは2050年までにエネルギー再生可能エネルギー依存を100%とするロードマップを作成したが(Jacobson et al., Renewable Energy online Feb. 3, 2018)、この研究をインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは楽観的と考え、問題点を指摘している(Heuberger and Mac Dowell, Jouleonline Feb. 26, 2018)。しかし再生可能エネルギーへの批判といえば原子力推進派が正しいのかといえばそうではない。

 

下図に示すように2050年をターゲットとして再生可能エネルギー比率を77%まで引き上げ、残り23%を原子力とバイオマスエネルギーで補ったとしても全体でエネルギーが9%不足する。これは再生可能エネルギーの変動による需要対応能力だけの問題ではなく、再生可能エネルギーの電源としての特殊性にある。原子力のように一箇所に1000MWの発電所を大都市近郊に設置できるわけではなく、再生可能エネルギー発電所は一般に大都市周辺に分散して整備されるから、送電網に組み込み送電をスマート制御しなくてはならない。そのインフラが整わないと再生可能エネルギーの弱点が露呈することになる。ここが最も難しく、解決できていないまま発電システムを整備しても電力を使い切ることができない。

 

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Credit: Imperial College London

 

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームの主張はしかし、再生可能エネルギー比率を増やすことへの批判ではない。化石燃料火力から再生可能エネルギーへ転換しなければならないことを認めた上で、不安定な再生可能エネルギーの同的配分を可能とする分散型の電源を送電網に組み込んだオンデマンド電力供給システムの整備を強調しているのである。蓄電や水素で再生可能エネルギーを貯蔵しておけば、大雪で太陽光発電ができない時でも停電にならないのである。

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