原子力脱却後のドイツの電力事情

福島第一の事故を受けてドイツが脱原発に踏み切ったが、その後の電力事情はどのようになったのだろうか。誰しも興味があるこの問題がメデイアで報道されることはない。しかし原子力を断ち切る以前からドイツは放射線規制や電磁波国内基準は極めて厳しく、国民の環境汚染についての関心は他の先進国と比べても際立っている。国民の専門知識も高い。

 

原発を停止すればどうなるかのか。緊急措置として火力に頼らざるを得ないことではドイツも日本と同様である。ドイツの場合はロシアから天然ガスを輸入することになったが、海上輸送に頼る日本よりはるかに有利で経済的であった。一方、エネルギー不足は再生可能エネルギー普及の加速にもつながった。しかし電力事情を消費の面から詳しく見るとこれまでの理解と異なる面も見えてくる。

 

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Credit: AGEB 2016

 

再生可能エネルギーを使い切らないドイツ

再生可能エネルギーで発電量が増大したが、ドイツはそれをすべて消費してはいなかった。つまり再生可能エネルギーへの依存度が大きくなれば、電力消費者への制限が必然的に生じるので、それはやらなかったというのである。

2000年以降、バイオマス、太陽光、風力(水力発電を除く)を含むドイツにおける再生可能エネルギー消費量は2000年の14.3 Twhから2016年の167.4 Twh と10倍以上増加している。それでもドイツの再生可能エネルギー生産と消費は実は一致していない。

2016年にドイツのエネルギー比率の約1/3は再生可能エネルギーだったが、同年に消費されたエネルギーの12%のみが再生可能エネルギーからのものであった。つまり生産料と消費量に23%の差が生じた。これは再生可能エネルギー発電量が増大しても、需給のタイミングが合わなかったり送電網の能力であったり、様々なミスマッチが存在しているからで、再生可能エネルギーが極端に増大しても使い切ることは別問題であることを示唆している。

 

福島第一事故のインパクト

2009年にCDUとFDPが原子力発電所の使用を延長申請に同意した後で、2011年に福島第一事故が起きた。ドイツ政府の行動は迅速であった。すぐにその決定は取り消され、1ヶ月以内に数箇所が閉鎖され、残りの原子炉の発電量は縮小された。

ドイツの一般市民は、チェルノブイリ災害以来、原発の運転に注意しており福島第一事故で政府は脱原子力の決断を行なったが、国民の支持のもとでの決断であった。原発の廃炉事業は公的・政治的支援を受け、 2000年から2016年までの期間中、原子力の消費量は1/2となった。

 

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Credit: theenergycollective.com

 

原子力エネルギーに続き発電量の2番目に大きな減少は石油火力である。それでも2000年以降にドイツで消費されるエネルギーの最大シェアは石油火力によるもので、過去17年間で安定している。この点も日本と似ているが異なるのは再生可能エネルギー比率である。再生可能エネルギーの1/2以上が原子力の削減を分を補う一方で石油火力の減少分を補っている。

日本では将来のエネルギー比率を原子力が(政府希望では)1/4を維持、再生可能エネルギーも同程度となるので、残りの1/2を化石燃料火力に頼ることは避けられない。ドイツも化石燃料から脱却できているわけではない。ロシアの天然ガスのドイツ向けの輸出が増大しているからである。特に新しいパイプラインNord Stream2の完成で輸入コストが下がったことで、火力を比率は増大している。

 

再生可能エネルギー比率が上がっても輸入が拡大する天然ガス

2009年以降、国内消費に比べて天然ガスの輸入量が大幅に増加し、消費量よりも7%多いガスが輸入されている。しかも2009年以降、天然ガス過剰輸入が続き、2013年には、必要量の13%を超えて加速し、2015年には27%を超えた。

ドイツは国内消費に必要な量を上回る天然ガスを系統的に輸入している。その理由は、ドイツが欧州の中心に位置するためと天然ガスネットワークのハブとして欧州市場での再分配の役割を担っているからである。天然ガスの再輸出は、主にベルギー、オランダ、フランス、オーストリア、ポーランド、スイス、イタリア、英国向けである。

再生可能エネルギーの消費が大幅に増えたことで、原発脱却に成功したことは日本と同じであるが、再生可能エネルギーへの取り組みで2国は別々の道を歩むことになった。ドイツは再生可能エネルギーは着実に増加している。その一方で、ロシアからの天然ガスの輸入は増え、エネルギーハブとしての再輸出は引き続き拡大し、エネルギー比率の中から化石燃料が(スペインのように)駆逐されることはあり得ない。

再生可能エネルギー比率の拡大のなかで化石燃料火力を含むエネルギー多様化は共存でき、最終的な段階(再生可能エネルギー100%と水素で貯蔵によるベース電源化)に向けての過度的段階と捉えることができそうだ。そろそろ再生可能エネルギー100%と水素貯蔵による持続可能なエネルギー社会のビジョンを描く時期にきている。

ドイツは再生可能エネルギー比率を拡大しても不要な電力(と天然ガス)を輸出に回し、石炭火力を残すという多様化を目指すことは参考になるのではないだろうか。

 

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