低線量放射線の生体影響は、良い影響なのか、悪い影響なのか

放射線業務従事者はあまり被ばくしていないに対するToshiさんのコメントへの返信として書こうとしましたが、長くなりすぎて、投稿できませんでした。内容としてそぐわないかもしれませんが、コラムとして投稿するのをお許しください。

Toshiさんの記事には放射線ホルミシスのことが取り上げられています。私は放射線ホルミシスの存在を否定するつもりはありません。放射線ホルミシスは、低線量被ばくの生体影響の一種と考えられます。放射線の直接的な生体影響が様々な過程を経て癌を発生させることもあれば、生体を救うこともあるということでしょう。ホルミシスという言い方自体、放射線を薬にたとえているようなものだと思います。薬は病気の人を救いますが、健康な人には害になることが多いと考えられます。低線量の放射線は体に良いことがあるから許容されるとしたり、統計的に癌を減らしている例を示して害はないと断じるのは無理があると思います。原爆被爆者のデータを示して放射線の生体影響にはしきい値があると言うのはその例です。このことについては、低線量ではがんが減っているように見えていて、これは、たばこや酒で癌になるべき人が放射線に被曝することによって癌になるのが抑制されて助かっているのだろうという議論が行われています。つまり、健康な生活習慣を持つ健康な人には癌抑制効果はないと。
Toshiさんの記事では、低線量では悪影響が見えない例として、動物実験の結果が引用されています。一方、近年、岡山大学の津田敏秀先生らは、5mSvの低線量でも発がんが増加するという見解を示しています。これはヒトについての疫学データですから、正しければ細胞での実験よりも、動物実験よりも強いものです。つまり、極低線量での生体影響はあるとする論文には、悪い影響があるとするものと良い影響があるとするものが共存していて、全体として、悪いと判断するか、良いと判断するか、学問的に合意される状況にないということが本当のところだと思います。
財産権、居住権に関しては、かなり難しい問題だと思います。低線量でもリスクがあるとするICRPの見積に裏打ちされた国の方針として、線量の比較的高いところの住民に避難するよう「お願いする」までは、一定の正当性があると思います。しかしながら、これは、生存圏の維持拡大という生命体の持つ最も基本的な欲求に反し、生き物としての人に対する尊厳を傷つけることにもなります。移住先を整え、お願いして移ってもらい、被ばくを防ぎ、国としての責任を全うするのが本来のあり方だと思います。それでも、ここにとどまる、とされる方を強制的に立ち退かせるのはかなり難しいはずだと思います。現に避難を拒否されてきた方もおられるようですが、どうなんでしょうか。何が何でも除染しなければということになりそうで、大変です。

金がかかりすぎるという問題については、自然を甘く見ていた代償であると言えると思います。

 

コメント   

# Katsuko 2014年03月28日 18:17
低線量被爆の影響が複雑で多面的にとり扱わないといけないことは、よくわかりました。願わくはこの議論のように客観的でデータにもとづく議論を続けていくことが大切だと思います。

またそのことをふまえてやみくもに設定した20km圏の意味を再評価するべきと思いました。

数日の間の判断ミスが悔やまれます。きっとこのコラムを読んで育った世代は科学的に判断できるように育ってくれるでしょう。

今後に期待します。

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