放射線業務従事者はあまり被ばくしていない

放射線業務従事者の被ばく限度は5年間で 100 mSv、1年間で 50 mSvとなっています。ICRPの見積による発がんリスクは、1 Sv あたり 5% の割合で癌死が増えるとされていますから、100 mSv では 0.5 % の人が普通の状態より余計に癌で死ぬということになります。癌は全死因の3分の1から2分の1に達するとのことですから、これに比較すれば十分に少ないように思われますが、そのような考えは、通用しないようです。

許容されるリスクかどうかを考える目安として、交通事故死があります。交通事故による死者の割合は、年間2万分の1程度ですから、5年で4千分の1、つまり 0.025 % のリスクとなります。ご承知の通り、交通事故のリスクは、放置してよいものではなく、少なくなるように努力されなければならないと考えられており、交通安全運動が熱心にとり行われています。年間2万分の1というのは、少ないようですが、読者の多くの方々にも、知り合いが交通事故で亡くなったとか、怪我や病気になったとかの方は少なくないだろうと思います。放射線の影響で癌になったとしても、必ずしも死ぬわけではなく、交通事故における怪我や病気と同様、その重篤度にはいろいろな段階があるはずです。したがって、放射線業務従事者が被ばく限度いっぱいまで被ばくすることは、交通事故のリスクの20倍ほどあり、十分に危険であるということになります。
それでは、放射線業務従事者はどの程度の被ばくをしているのでしょうか。
FBNews No.443(http://www.c-technol.co.jp/pdf/443FBN.pdf)の12ページには、千代田テクノル社の測定・算定による個人線量の平成24年度集計があります。これを見ると、年間を通じて被ばくが検出されなかったものが医療と非破壊検査を除いて 90 % を超えています。医療と非破壊検査についても、1 mSv 以下なら 90 %を超えています。もっとも被ばくの少ないのが研究教育で、96 % が検出されていません。このように、大部分の放射線業務従事者については、被ばくが検出されないか、人為的な被ばく線量が自然放射線のレベルに満たない程度となっています。私も含め、放射線管理に携わったことのある方はよくご存じのように、この程度の被ばくであっても、ALARAの原則(As Low As Reasonably Achievableの略で、「合理的に達成可能な限り被ばく量を低減する」という原則)の名の下に、さらなる被ばく低減の努力がなされています。
 福島第一原子力発電所事故により大地が汚染し、空間線量が高くなった地域については、年間線量 20 mSv が居住可能かどうかの一つの目安と考えられているようです。放射線業務従事者の被ばく限度と同程度ではありますが、私はこのことについて強い違和感を覚えます。その理由は放射線業務従事者の実態を身をもって知っていることから来るのだと思います。

 

コメント   

# Fukushima Kids 2014年03月26日 07:22
最近の低線量被爆が生体に与える影響は無視できるという主張の多くが、ISS滞在中の高線量被爆が無視でき るなら、低線量被爆は問題にならない、とするものです。ISS長期滞在に至っては年間20mSvを大きく超 えていますが、一方では長期にわたる体内被曝と線量のみで比較できるのか不安になってきました。
# Toshihiro 2014年03月27日 11:22
個人的な願いを実現するために許容されるリスクと職業を維持するために許容されるリスクとそれ以外の場合に許容されるリスクはそれぞれ違うはずだと思います。特定の職業について許容されるリスクが一般より高いならば、職業選択の自由は保障されなければならないと思います(形式的にではなく)。ISS長期滞在におけるリスクを統計的に有意に検出することは対象件数が少なすぎて難しいのではないでしょうか。
人が生き物として生き残りや繁栄を目指して生存圏を維持拡大したいときには、生存の限界に近い高線量にさらされるところで生活することも正当化されるのかもしれませんが、他人には絶対に強制されたくありません。
# Toshiさん 2014年03月28日 00:07
宇宙ステーション滞在中の、は、
わたくしがいつも説明することです。
これは、放射線生物学の結果を「信じたくない」人も否定できない、例を示すためです。

そして、政府に、
高々20mSv/年の地域の人に、お前は危ないから入るな、と、財産権を、居住権をはく奪する、大きなお世話を焼くのに、
なぜ、宇宙飛行士には、大きなお世話を焼かないのか?!と問うためです。

低線量が問題にならない、と説明する真の根拠は、
動物実験で、ほぼ確立されているからです。

「放射線の真実」のデータをお読みください。
# Alpha-san 2014年03月26日 07:36
TEPCO社員1人は、これまで、線量がおよそ90ミリシーベルトとしていたのを、およそ180ミリシーベ ルトに修正したため、緊急時の被ばく限度の100ミリシーベルトを超えていたことになります。でも一時的な 被爆と年間20mSvで5年が同じとはいえないでしょうか。ちなみに構造解析の際の放射線損傷は強い照射を 短時間ですませる方が少ないと考えられています。
# フイルムバッジ着用者 2014年05月10日 10:39
放射線従事者の被爆量が低いのはひとつには装置、しくみを理解しているからでしょう。

被爆した際のもろもろの手続きがうっとおしいことも認知していて、気を使うからでしょう。

いまどきカード型にしてもらいたい。

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