小型化で核融合と原子力が競合する時代〜新エネルギーの行方

米国と(最近の)中国では大都市と周辺都市部を結ぶ高速道路の渋滞は深刻化し通勤時間になると、道路は麻痺し膨大な化石燃料が消費され、大気に戻されるカーボン・ポジテイブとなる。

北米のシェールガス(オイル)増産で、一時的に原油生産が増え原油価格の低下の一因となった。しかしシェールガス(オイル)に増え続ける車に対応して化石燃料の枯渇を受け止めるだけの埋蔵量はない。掘削地点はこの数年で激減し、相次ぐ日本企業の投資失敗は記憶に新しい。

 

期待はずれのバイオ燃料

一方で深刻化するCO2排出量規制を背景にカーボン・ニュートラルとしてバイオ燃料に期待が高まり、北米を中心に化石燃料の置き換えが進みつあった。しかしバイオ燃料が製造過程も含めれば、カーボン・ポジテイブであることがわかると急速に期待が薄れ、別のエネルギー源を模索する動きが活発になっている。しかしこれまでの期待を背負って来た核分裂による原子力エネルギーが安全性と財政上の問題によって見直しを迫られることになった。これらの状況を打破する新エネルギーとして核融合がクリーンエネルギーの中心に置かれることは自然な流れかもしれない。

さらに人工光合成によって大気中のCO2を取り込み水を分解して得られる水素から人工燃料を作る試みも本格的な実用化研究開発が始まった。また光触媒で水素を製造し燃料電池で発電することも研究開発が一層活発になっている。これらは太陽エネルギーを炭素鎖の結合エネルギーに取り込んで、蓄積し利用する意味では化石燃料と変わらないが、製造過程で化石燃料を使わないので、カーボン・ネガテイブもしくはカーボン・ニュートラルとなる。

核融合についての私たちの理解はクリーンエネルギーとして優れているが、「ITERやJT60に代表されるトカマク方式は装置が巨大で電力網に組み込むには適さないし、まだ実用化は程遠い」であった。しかし最近の核融合の展開は上記の理解が過去のものになりつつあることを示唆している。

 

レーザー圧縮による核融合

ローレンスリバモア研究所(注1)がレーザー核融合の入力パワーを上回る出力が得られたことを発表した(Nature 506, 343?348 (2014))この論文で研究チームはレーザー波形を改良することによりプラズマ発生効率を1桁あげ、デユーテリウムートリチウム燃料(注2)で初めて、入力を出力が上回ったという。米国はトカマク方式に消極的で最初から核融合炉の本命としていた。背景には大出力レーザーの軍事転用を視野に入れていたが、予算が膨れ上がりITERに参加してトカマク方式の開発にも予算をつけだした。この方式の難点は巨大レーザーを運転するために必要な電力である。

(注1)ロスアラモス、サンデイアと並んで軍事予算で運営される。

(注2)デユーテリウム(二重水素)、トリチウム(三重水素)の核融合でエネルギーを取り出す。実現には数億度の高温が必要である。

 

巨大化する実用炉
日本を含む各国が協力してトカマク方式の国際熱核融合実験炉(ITER)を建設中である。経費は欧州が45%、日本、中国などその他の参加国は9.1%づつを負担する。日本の負担額は年間で150億円だが10年間にわたる継続が義務付けられている。またITERには発電設備がないため、実用炉とするための発電技術開発は並行して日本のJT-60で行われる。

「臨界プラズマ条件」(注3)JT60がは2007年に実現しているので、今回のリバモア研究所の発表は正しくはレーザー照射でも臨界条件が実現した、ということになる。しかしレーザーにしろ、トカマク方式のように磁場閉じ込め方式にせよ、実用炉では膨大な電力を必要とし、巨大な装置とならざるを得ない。

(注3)外部から加えたエネルギーと核融合反応により発生したエネルギーが等しくなる条件

 

核融炉の本命はITERの延長線上にない
ところがロッキードマーチン社は、実用炉をコンパクト化する技術を開発し、100MW発電機を10年以内にトラックに積めるサイズで実用化するという発表を行った。どのような技術が使われているかについていっさい発表がないため、現時点ではアドバルーンと考えたくなるが、小型核融合に関する最近の論文がITERの行き方と異なる小型トカマクが実用炉になることを示唆し、世界的な注目を浴びている。

 

最近の研究によればトカマクの高温プラズマ閉じ込め容器をドーナッツでなく球状にすると、入出力比はサイズによらない。つまりプラズマ閉じ込めの効率は容器が大型になるほど増大すると考えられてきた従来の開発方針が覆されることになる。トカマク方式では、高温水素プラズマがドーナッツ状の閉じ込め容器中を周回する。

磁場による圧縮とこの周回する運動エネルギーで核同士を衝突させ融合してヘリウムとなるときに放出されるエネルギーを熱出力として取り出す。超伝導磁石を用いてもプラズマ容積は大きい必要があると考えられ、ITERのような巨大な施設が計画されたが、100MWクラスについては核融合と原子力が競合する時代が近い。

 

ちなみに100MWクラスの小型原子炉は電力網に分散配置することで1000MW発電を可能にするし安全性も高くなるが、現時点で採算性がコージェネタービン発電に劣る。ITERやレーザー核融合のような大型施設では同様に採算性は難しい問題であるが、100MWのシステムが低コストで製造できれば素晴らしい。

 

 

 

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