英国のEU離脱で見直される原子炉

フイナンシャルタイムズ(アジア版)によれば英国新政権(注1)が中国から出資を受ける計画だった原発建設を見直す方針を示したことに中国側が反撥していることを伝えた。独力で独自の原子炉を開発して来た米原子力先進国であった英国が原子炉の中身に立ちらないブラックボックス運転(ターンキー方式)で原子炉を稼働させることは驚きであった。これについてはすでに記事をかいているのでそちらを参考にしていただくことにして、ここでは焦点となっているヒンクリー・ポイント原発とブラッドウエル原発とはどういうものかを説明しておく。

 

(注1)テリーサ・メイ首相はデビッド・キャメロン首相を引きついだ保守党党首。EU残留派であったがEUについては懐疑的であり、国民投票の結果を受けて離脱を遂行するとしている。

 

現在、英国が建設を進めているのはアレヴァ社の欧州型原子炉(EPR)、ウエスチングハウス(東芝)のAP1000、そして日立GEのABWR(Advanced BWR)の3基。EPRとAP1000は第三世代ABWRも同等の安全性を備えている。英国の原子炉は全部で16基で10GWの発電能力を有する。このうちPWRはサイズエルBの一基のみ。英国の原子炉の主力はガス炉である。

 

ヒンクリー・ポイント原発

ヒンクリー・ポイントはサマセットの河口部にある原発でA地区に2基の267MWのマグノックス炉、B地区に655MWの改良型ガス冷却炉2基を有している。マグノックス炉は日本が商業原子炉として輸入しようとしていたコールダーホール原発で確立された英国型原子炉で、稼働は1957年ですでに運用停止となっている。英国にはマグノックス原子炉はヒンクリー・ポイントを含めて11基存在するが老朽化している。

ヒンクリー・ポイントB地区にある改良型ガス冷却炉の稼働は1967年であるが2023年に停止となる。管理は英国の電力会社ブリテイッシュ・エナジーである。A, B地区の原子炉が2023年には全て停止するため英国政府は2010年に新たにヒンクリー・ポイントC地区に新規原子炉を建設する計画を立てた。一方、ブリテイッシュ・エナジーはフランスのEDFが買収したことで、フランスの国営企業の管理下となった。

EDFはアレヴァとの関係が深いため新規原子炉として最新型の加圧水型原子炉である欧州型原子炉(EPR)2基の建設を行うことになった。EPRは設計は優れているが先行したフランス、フラマンヴィル原発ほか、同型機の建設が建設コスト高騰で頓挫している。またヒンクリー・ポイントの周辺住民は新たな原発建設に反対し反原発運動が激しくなっている。

高騰したEPRの建設資金は中国国営企業が出資して、民営化したフランス電力(EDF)が、アレヴァ社とともにEPRを建設することになっていた。習近平国家主席が英国を訪問した際のトップセールスとしてキャメロン首相と合意した内容は中国の国有企業、中国広核集団がEDFに出資して2025年の運転開始を目指すというもの。

EPR2基の建設費は日本円で約4兆5千億円となり完成後は出資額に応じてEDFと中国が2:1の比率で所有することになる。所有権の一部が中国になることに安全保障上の危機感からメイ政権はこの契約内容自体を見直す方針を示している。

 

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Source: Nuclear AMRC 

ブラッドウエル原発

ヒンクリー・ポイントと反対側のエセックス州の河口にある原発で、1962年から発電を開始した2基のマグノックス炉で、2002年に運転を終了している。ブリテイッシュ・エナジーは新型原子炉の建設を予定していた。

ブラッドウエルに建設される原子炉は中国製の第三世代原子炉HPR1000(華龍1号)であるが、英国にとっては初の「ターンキー方式」原子炉導入となる。日立GEも参入を狙って英国のホライゾン・ニュークリアパワーを買収し着々と準備を進めていた中で、強引なトップセールスで中国製の原子炉導入が決まった。しかし英国の原子力政策は軍事的側面を持ち、安全保障の面で中国の原子炉導入に再考の判断が下された。

HPR1000は1000MWクラスの第三世代原子炉で、加圧水炉としては最新の技術が使われ安全面で見劣りしないとされるが、もともとガス炉が主流であった英国には稼働中のPWRは1基のみとなる。

ヒンクリー・ポイントのEPRの融資による所有権の問題とブラッドウエルの原子炉のターンキー管理は、どちらもメイ政権にとっては安全保障面で頭の痛い問題である。ブリテイッシュ・エナジーがEDF所有になり、そのEDFが中国の資金で運営されるという構図は最も重要な管理責任を危うくする。EU離脱の財政的影響も強く影響する今後の英国原発の更新には困難な問題が立ちはだかる。

写真は原子炉を建設中の中国の労働者。技術立国を目指す中国だが高速鉄道の事故のイメージが捨て去れない。技術立国を目指すなら責任の重みを認識しなければならない。

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