物質の放射線損傷をポンププローブ分光でリアルタイムモニタリング

原子炉内の高放射線環境に耐える材料の性能を評価するために、MITとサンデイア国立研究所の研究チームは、放射線で誘発する物質の変化を連続的に監視できる新しいシステムを開発した(Dennett et al., Nucl. Inst. And Mth. Phys. Res. 440, 126, 2018)。

 

70年代に建設された原子力発電所が運転寿命の終わりに近づいている。運転を安全に延長できるかどうかを決定するためには、その内部の物質の状態を知る必要がある。開発されたレーザーベースのモニタリングシステムは、物質の物理的性質(弾性や熱拡散率など)の変化を非破壊で観察する。

このシステムは、ポンププローブ分光のひとつである過渡回折格子分光法(Transient Grating Spectroscopy)(下図)と呼ばれる分光技術に基づいて、材料の表面の微細な変化を探知する。材料の熱伝導性の変化などの物性への放射線損傷の影響を調べることがリアルタイムでできるようになった。

 

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Credit: slideplayer 

 

原子炉環境で材料劣化の引き起こす中性子衝撃をシミュレートには6MVのイオン加速器施設を使用した。研究チームは2つの純金属、ニッケルとタングステンを対象とし、ポンプ用レーザービームを用いてフォノンを励起し、表面フォノンを別のプローブレーザーで観測する装置(下図)を開発した。

 

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Credit: MIT

 

サンデイア国立研究所はロスアラモス同様、米国の研究所の中でもセキュリテイが厳しいことで知られる。筆者も見学時には事前に申請しておく必要があり、ものものしい警備に驚いた経験があある。アルバカーキーにあるこの研究所は軍の委託研究や原子力関連の技術の開発研究が主である。

建物はいたって質素でこれもロスアラモス同様だ。表向きは重くるしい雰囲気だが、研究者の中には純粋に基礎物理や物性科学の研究者もいる。この研究もポンププローブ分光の応用で、そうした基礎科学の研究者が関わっているのだろう。これから原子炉の大部分が老朽化していく米国にとっては、寿命延長が死活問題となるだろうから、リアルタイムモニタはそのための予防策なのかもしれない。

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