XFELによるチトクロームcオキシダーゼの酸素中間体の解明

アリゾナ州立大学の研究チームは、XFELを用いて呼吸の生化学的経路(有酸素呼吸の最終段階)における中間体の結晶構造のスナップショット観察に成功した。

 

チトクロームcオキシダーゼ

XFEL実験は研究チームが開発した流体力学的集束ミキサーがキーテクノロジーとなる。このミキサーは、高解像度の3Dプリントされた2つの酸素飽和緩衝液を、ウシチトクロムcオキシダーゼ(bCcO)微結晶を含む流体と混合するマイクロリアクターである(Ishigami et al., PNAS online Feb. 11, 2019)。

チトクロームcオキシダーゼ(CcO)は、ミトコンドリア膜にある細胞の呼吸電子伝達系における最終反応経路の酵素である。CcOは4つのチトクロムc分子から電子を受け取り、それらを酸素分子に移し、分子酸素を2つの水分子に変換する(下図)。

 

Cytochrome c oxidase A Conventional catalytic cycle The squares show different

Credeit: researchgate

 

時間分解シリアルフェムト秒結晶学

研究チームはLCLS-XFELを光源とした時間分解シリアルフェムト秒結晶学(TR-SFX)と呼ばれる新しい手法を用いた。TR-SFXは、蛋白質結晶を含む液体流を、XFELビームと交差させる、タンパク質構造決定技術である。

結晶は回折し、その直後に強いXFELビームによって破壊されるが、回折パターンは2D検出器で記録される。回折パターンから電子密度マップおよび蛋白質の詳細な構造情報が得られる(下図)。

 

F5.medium copy

Credit: PNAS

 

この方法は、微少結晶から高解像度の構造情報が得られるので、膜蛋白質などの結晶化しにくい蛋白質に有効である(別記事参照)。

CcOは、酸素を水に還元し、化学エネルギーを利用して、以前には解明されていなかったメカニズムによってミトコンドリア内膜を横切ってプロトンの再配置を行う。TR-SFX研究は、bCcOの重要な酸素中間体の構造決定を可能にした。研究チームの実験はバクテリアのCcOと比較され、ウシの酵素におけるプロトン移動のメカニズムに関する知見が得られた(下図)。

 

F6.medium copy

Credit: PNAS

 

この手法は他のCcO中間体の構造決定にも適用できるため、酵素反応中間体の解明が加速すると期待されている。

TR-SFX実験のキーテクノロジーは研究チームが開発したマイクロリアクターであるが、流体ミキサーの起源をたどると日本の木原グループの開発した小角散乱ストップトフローセルであった。その後、ミキサーはマイクロチャネルによって微細化が進み、高輝度ビームと並行して開発研究が進んだ。マイクロリアクターをマイクロビームと組み合わせたのはバークレイの放射光赤外ビームライングだったが、いまではミクロンビームが汎用になった。XFELのTR-SFX実験は究極的なマイクロリアクタ実験といえるだろう。

 

関連記事

ピンクX線ビームによるシリアル結晶構造解析
ナノプローブX線イメージングによる半導体界面オペランド計測
LCLSのXFELによる酵素中間体の構造決定
メガヘルツシリアル結晶構造解析〜European XFELの初成果
抗生物質耐性の機構解明に成功〜ダイアモンド放射光による構造解析

You have no rights to post comments

hitachihightec

hitachihightec science

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.