2016年から電力完全自由化で何が変わる

 我が国の構造改革の論議はこれまでに郵政民営化、三位一体改革、金融自由化、医療制度改革が中心であったが、電力自由化も段階的に導入されることとなった。福島原発後の電力危機と温室ガス排出量規制をきっかけとして、電力料金の抑制を求める声が強まり、電力完全自由化すなわち発電事業と送電事業の分離の最終段階が近ずいた。

 

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 これは我が国の特殊な事情ともいえる、一般電気事業者(10社)が発電と送電を行い地域ごとに1社限定の状況では、競争原理によるサービス向上とコスト削減が期待できないためである。

 

 例えていえば携帯キャリアが1社でネットワークの維持と通信ビジネスを独占するようなものだ。電力自由化をこの例に当てはめると発電事業者が複数存在して、送電業務を分離して電力価格(単価)を互いに競争する、というものである。確かに携帯料金が下がった背景には3キャリアの競争があることは事実である。さらに最近ではネットワークを大手キャリアと共有して安いサービスを提供する業者もある。

 

 電力システム改革により電力の小売と発電が全面的に自由となる。送配電部門は分離され中立となる。スムースな自由化のために「広域系統運用機関(仮称)」を設立、デンんき小売事業の全面自由化、法的に送配電部門の中立化を段階的に行うことが内閣決定された。 

 自由化範囲はすでに電力小売事業は低圧(家庭用)の需要を除くすべての需要に拡大され、特別高圧または高圧受電で50kW以上では60%以上が自由化されている。これを2016年度から低圧(家庭用)についても自由化する、というものである。

 

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 2011年の震災で原発が停止する前は自由化が部分的に行われたため電気料金は低下の傾向にあったが、2011年以降は原子力を火力に置き換えたことで燃料費が年間3.6兆円にも達し、電力料金の値上げが続いている。

 一方、特定規模電気事業者(新電力)は震災後に増加が著しく現在109社となったが、電力供給はそのうちの39社である。2016年度からの完全自由化と送配電事業の分離により、新電力の電力小売を促進するのが狙いである。

 一般電気事業者10社のなかでも東電と関電は規模が大きいがいずれも、新電力の需要を伸ばしてきているため、今回の措置で完全自由化が可能になれば電気料金抑制が期待される。

 新しいルールの公的文言はわかりにくいが、簡単にいうと電力自由化前は地域の電力会社(一般電気事業者、全国で10社)から受電するに際して、認可に基づく規制料金で競争原理が働かないものであった。自由化がある程度進んだ現在は新電力(特定規模電気事業者、全国で109社)が一般電気事業者と競争して大口受電の工場、オフイスビルなどに電力を小売できているが、家庭用の電力は一般電気事業者が独占している。完全自由化が達成されれば一般家庭でも新電力から電力を購入できる、ということになる。

 

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 2016年度から発電事業者(10年以上1000kW超または5年以10万kW超の電気を供給する事業者)(注)は送配電事業者を介して送電、小売電気事業者がそれをすべての需要家に小売する、という図式になる。

(注)IPP (Independent Power Producer)と呼ばれる。発電だけを行って電力会社に卸売り販売をする独立系の事業者。一般的に新電力を指すことが多い。日本では1995年の電気事業法改正で新たに認められるようになった電力の卸供給を行う発電事業者 をさす。下の図にあるようにこのテーマの国際会議(下)がインドネシアで開かれるなど国際的な関心が集まっている。 

 

 新電力の一般電気事業者との競争は確実に電力料金の抑制につながる。これまで国は一般電気事業者を優遇する政策をとってきたことは産業育成とその国際競争力を高めるためであっただろう。だが産業に国際競争力をつけるには国内の電気料金も国際競争力が要求されるに及ぶと、完全自由化を導入せざるを得なくなった。

 

 一般電気事業者はその地域の巨大企業であるが火力燃料費、原発廃炉費用、核燃料廃棄物処理費用、再生可能エネルギー促進費などで債務が増え競争力は低下する。新電力も安定な電力供給に応えるには発電だけでなく蓄電設備や固定式燃料電池などの設備投資が必要となる。また新電力はベース電源となる再生可能エネルギーとして地熱発電や火力であってもクリーンコールなど温室ガス排出の少ない新技術を実用に供して欲しい。単に電力料金が安い会社を選ぶのでなく環境問題にも気を配るエネルギーミックスを実現して欲しい。

 

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