エネルギーミックスを考える際に知っておきたい−チョークポイント

 世界中の原油消費国へ生産国から原油を送り届けるオイルロードには陸上輸送と海上輸送ルートが存在する。海上輸送においてオイルロードのネックとなる数少ないリスクが高い地点をチョークポイントという。

 

 世界の海上輸送マップ(以下)で日本と中東の間のルートは中東からのいわゆる「オイルロード」である。マラッカ海峡を通る場合が多いが一部はボルネオ沖を迂回していることがわかる。ちなみに世界の輸送量の90%は現在も海運である。

 

Shipping routes red black

 

 船舶の運航の上でチョークポイント水域にはa)運河・海峡巾、b)運河・海底の深さ、c)潮流及び天候に加えて、d)海賊、テロ攻撃、e)政治的不安(海峡封鎖)などのリスクがある。世界の原油生産量の50%は海上輸送に頼っているため、これらのリスクが現実になれば、世界のエネルギー安全保障に多大な影響を及ぼす。

 世界のチョークポイントは次の8カ所が知られている。
①スエズ運河
②パナマ運河
③ホルムズ海峡
④マンダブ海峡
⑤マラッカ海峡
⑥ボスポラス海峡
⑦カテガット海峡
⑧スカゲラック海峡

 大型化したタンカーをULCC (Ultra Large Crude Oil Carrier)、VLCC(Very Large Crude Oil Carrier)と呼ぶ。VLCCは20-32万tクラス、ULCCはそれ以上の区分となるが、①、②は通行できない。ちなみに①および③から⑥はイスラム圏であり、イスラム勢力がほとんどの原油輸送のチョークポイントを押さえているといえる。

 

Chinas Critical Sea Lines of Communication

 

 中東から日本への原油輸送はペルシャ湾とアラビア海をつなぐホルムズ海峡が中心で、海峡両側はイランとオマーンである。日本向けの原油の75%がホルムズ海峡経由となるためエネルギー安全保障のネックといえる。つまり日本への原油輸送はチョークポイントの意味する通り、封鎖されれば息の根が止まるということである。

 イエメン空爆で話題になったイエメンに面しているマンダブ海峡は紅海とアラビア海をつなぐ海峡で、ここを通る原油はホルムズ海峡を通る原油量の約1/5であるものの封鎖されれば原油価格に影響する。

 たとえホルムズ海峡を抜けてもさらにインド洋と南シナ海をつなぐマラッカ海峡を通過しなくてはならない。マラッカ海峡は水深が浅いためサイズによってはロンボク海峡へ迂回を余儀なくされる。さらにアラビア湾(ソマリア沖)では海賊の乗っ取りリスクが増える。下の写真はイエメンに面したマンダブ海峡。

 

Bab el Mandeb NASA with description copy

 

 中東からの海上輸送に頼らない原油輸入ルートは日本のエネルギー安全保障の上で課題である。311以降は原発停止の穴埋めとして火力に頼っているが、火力燃料で石油が占める割合は高く、燃料費購入費が年間3.6兆円にも達する現状はエネルギー危機が去ったとはいえない異常事態といえる。

 こうしてみると日本が原発の依存度が(フランスを除いた)先進国中でも高い(30%)の政策をとったことは、喉元を抑えられている海上輸送の潜在リスクを減らすことでもあったと考えられる。現在、原発の再稼働に向けて走り出しエネルギーミックス上で20%下限の提案が産業界、電力会社からなされている。このコラムでもエネルギーミックスについて考察をしたが、問題は「脱原発」や「20%下限の原子力」で片付けられるほど単純ではない。

 再生可能エネルギーは設備投資を除けば燃料費は不要で無尽蔵に近いリソースがある。その意味で不安定さを新しい技術で取り除きベース電源に近づけるなら、再生可能エネルギーの比率を高めていくことに異論を唱える人はいないのではないだろうか。原子力のエネルギーミックスの最適比率は議論の余地があるが、それには山積みのやるべきことをきちんとやった上で、新技術を駆使した究極的な原発に置き換えることが最低条件であろう。

 

 石油関連業者には気の毒な気もするが、(貴重な)石油を火力に頼ることは温室ガス排出の点で望ましくない。EVや燃料電池車で石油依存をなくす方向に社会も動き出した。チョークポイントのリスクを解消する抜本的な方法は脱石油かも知れない。そのための原子力であったはずだ。資源(燃料)がない国が産業で身を立てるにはエネルギーが必要だ。そのために戦争を起こしたほどである。自然エネルギーは地球上に公平に与えられた機会なのだ。もう一度エネルギーミックスを考えてみるべきなのではないだろうか。

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