将来のエネルギーミックスについて

 関西電力と日本原子力発電は17日、運転開始から40年以上(注)たつ老朽原発計3基の廃炉を決め、いずれも4月27日に営業運転を終了すると届け出た。中国電力と九州電力も18日、老朽原発計2基の廃炉を決めて計5基の原発が廃炉となる。。一方、経済同友会は2030年における総発電電力量に占める原子力の比率を、20%を下限とする提言をまとめるなど、再稼働へ向けての動きが活発化している。

 

40年ルールをどう読み解くか

(注)「40年ルール」の法令の条文は「原子力発電所の運転は、使用前検査に合格した日から原則として40年とし、原子力規制委員会の認可を得たときに限って、20年を越えない期間で運転延長できるとするものである。」なので、最大60年で稼働可能と読める。廃炉で発生する1基当たり360-770億円の損失(注)を10年間かけて電気料金に上乗せできる会計制度(2015年3月期から導入)により、廃炉費用が稼働中は債務にならないが、廃炉決定後の経費は電力料金の値上げで回収される。

 

(注)型式や規模によって異なる。廃炉工程は20-30年で完結しその経費は大型(100万kW以上)で570-770億円と予測されている(経済産業省資料)。

 

 ここでは311以降のエネルギー供給実績を振り返り、将来のエネルギーミックスにどのような選択肢があるかを簡単にまとめてみた。原発再稼働に関する議論に役立てていただければ幸いである。

 

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原発停止の代替えは火力だった

 311以降、エネルギー供給量の30%を担って来た原発が全基停止したため、原子力の寄与は完全にゼロとなった。下のグラフエネルギー源別一次エネルギー国内供給の推移(資源エネルギー庁資料)では311を境にして、原子力比率の落ち込みに対応した石油と天然ガスの増大が明らかである。一次エネルギー国内供給の推移(棒グラフ)では原子力を補っているのは、天然ガスであることがよりはっきり認識できる。

 

 再生可能エネルギーの割合も増えたが、それでも原発停止分はほぼ石天然ガスが担っているといえる。石炭と天然ガスでは後者の温室ガス排出は低いこともあり、先進国としてこれ以上温室ガスを増やせない日本は天然ガスを選択した。このことは適切であったが、結果天然ガスの輸入量は311後に急激に増大した。2014年度の一般電気事業者向け発電実績(資源エネルギー庁資料)を以下に示す。現状で電力需要は過不足ないが、ほとんどを火力が支えている、異常な比率(エネルギーミックス)なのである。

 

水力   4,406,255   単位は1,000kWh

火力   62,690,363

原子力  0

風力   5,406

太陽光  5,525

地熱   220,509

バイオマス 火力中(24,147)

 

 

 火力への高い依存度の代償は温室ガス排出量である。下記の排出量推移(資源エネルギー庁資料)をみれば明らかなように、先進国としては異常な高さで、国際的な批判にさらされる。そのため将来のエネルギーミックスにおいては温室ガスの少ない電力源として、再生エネルギー、火力なら天然ガス、そして(安全性を確保した上で)原子力をどのような比率で使うのか長期的な考え方を設定すべき時に来た。

 

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 天然ガスのメリットはコストが安いとはいえ中東の天然ガスは割高で、財務省統計によれば2013年11月の石炭、石油と天然ガス総量(鉱物性燃料)の輸入額は311前の63.4%増、天然ガス輸入量は311前に比較して、16%増え、金額にして2兆3500万円にも達した。その後も燃料購入費用は膨らみ総額で3.6兆円/年に達した。このため貿易赤字の主な原因とされた。しかしその後の貿易赤字の推移をみれば、原発停止による燃料輸入の増加分よりも大きな損失が生じたことから、この可能性は疑問視され燃料費以外の為替変動や構造上の問題も大きいとされる。

 

 燃料費調達が貿易赤字の一端とはいえ、全て出ないこにしても電力料金の値上げによる損失は大きく、電力料金値上げが増えて行けばGDPマイナス成長もあり得る。代替えベース電源をみつけない限り、簡単に脱原発と片付けられない。また原子力予算は原発地域の重要な地方財源である事実、産業のとして国内経済および輸出への影響、将来に向けて技術維持が必要なこと、防衛上の観点、廃炉および核廃棄物処理などの後処理技術の開発の必要性など原発容認派の論点は幅広い。ここではこれらについては詳細に立ち入らない。

 

再生可能エネルギーはベース電源になり得ないか

 再生可能エネルギーは、温室ガス排出が少ないが、初期投資が大きいため電力料金の負担が大きくなる。また変動が大きくベース電源となりにくいことである。確かに再生可能エネルギーの比率を高めて過半数を越える国は限られる。我が国では(少なくとも短期的には実現困難といえる。そこで(短期的には)ベース電源としては原子力か火力という選択になる。しかし中長期でみれば再生可能エネルギーを増やすことに異論のある人はいないだろう。


 一方、火力(天然ガス)は、ベース電源となり得るが、 資源に恵まれない日本では燃料調達コストによる貿易赤字がふくらみ、結果的に電気料金の値上げが避けられない。我が国の電力会社が天然ガスに消極的である根拠ははっっきりしないが、温室ガス排出の観点からは(クリーンコールを除き)石炭、石油の比率は下げたい。

 政府と電力会社は、ベース電源としての安定性、温室ガス排出が少ないこと、燃料調達費コスト(貿易赤字)を理由に原発再稼働後、原子力依存20%下限とした将来のエネルギーミックスを想定している。

 安全性について世論の納得を得られない一方で、上記の観点から再稼働への動きが活発化している。しかしベース電源を原子力中心にするか、火力中心とするのか慎重な吟味が必要である。一方、火力といっても旧来の火力発電所を再稼働するのでは効率が悪い。温室ガスで不利な石炭でもクリーンコール技術がある。またコンバインド発電(ガスタービンと廃熱利用の水蒸気タービンを組み合わせる)により、火力のエネルギー効率を高めることができるる。さらに天然ガスのコストはシェールガス増産で下がると予想されている。火力発電については石炭をゼロとし、石油を減じる一方で天然ガスは臨機応変に活用するエネルギーミックスが現実的である。

 

 固定買い取りでは売電認定が必要になる。認可済みの事業者が売電を始めれば再生可能エネルギーが20%にも達する。下の再生可能エネルギーによる発電電力量(2014年5月、資源エネルギー庁資料)を考慮すれば現状の20%は控えめな数値で、少なくとも25-30%の範囲でのエネルギーミックスは現実的と思われる。

 

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 A) 原子力の比率20%下限を継続するのか、B) 新規建設をやめて老朽化により徐々に脱原発に向かう(注)のか、C) 新規原発を老朽化原発に置き換えることで一定の原子力をエネルギーミックスに残すか、またC)については廃炉と核燃料廃棄に要する費用を積み上げた、精度を上げた評価が必要である。再生可能エネルギーはベース電源になり得ないとは言い切れない。

 

(注)スリーマイル島事故の後、原子炉新規建設は凍結されて来た。そのままでは老朽化した原子炉が廃炉になり脱原発に向かっていた米国もオバマ政権が新規建設を認可した。エネルギミックスは8%である。世界的な原油価格下落の一因となったシェールガスの極端な増産で今後も天然ガスの比率は増大する一方である。

 

エネルギーミックスの原子力の最適比率

 何故、原発を長期に稼働するのかといえば、原発は膨大な初期投資の償却が終了すれば、その後は燃料費のみのコストで運営できるので、できるだけ長期間運転できた方が経済的だからである。ちなみに米国では80年間の耐用年数を検討し始めた。

 ベースロードとして原子力を考える場合、これまでの議論に抜け落ちている点は


(1) 安全確保の徹底の情報公開
(2) 40年ルール適用で生じる廃炉コスト、核燃料処理費の債務処理。固定エネルギー買い取りも含めて料金体系の見直し。
(3) 再生可能エネルギーはベース電源として本当に使えないのか

 (3)は全てそうかというわけではない。例えば地熱発電は恒久的に24時間発電が可能である。同様にベース電源として使える潮流発電やバイオマス発電などもある。特に地熱発電は地形的な有利さがあり、ダークホース的な存在である。これらを効果的に組み合わせて再生可能エネルギーのベース電源化も検討してもらいたい。地熱発電の問題としてあげられる環境保護については解決できない問題ではない。一方原子力についてもベース電源の一部として

 原子力をエネルギーミックスとして残すならば、安全で効率の良い第四世代原子炉で老朽化した原子炉に置き換えることが望ましい。具体的なロードマップの公開が望まれるが、安全性と電気料金値上げによる受益者負担が情報公開が必要になる。情報公開がなければ国民の信頼性は得られない。

 

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国ごとに異なるエネルギーミックス最適解

 上の図はBPが2010年にまとめた世界全体のエネルギー供給量種別である。もちろん国のエネルギー消費量の規模によっては再生可能エネルギーが過半数をになう国もある。エネルギー密度と総量の多い工業国ではその国の事情にあったエネルギーミックスを考える必要があるので、少なくとも2050年くらいまでのスパンでのエネルギーミックスのモデルケースを示すべきである。

 国連環境計画(UNEP)の提言(下)では再生可能エネルギーが19%で原子力20%下限と真逆である。先進国としてこの比率が逆転することのないようにしたい。

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エネルギーミックスの未来像

 ベース電源となり得る地熱発電所の建設には環境保護にも気を配る必要があるので時間がかかる。時間を稼ぐには天然ガスが最適であるが、中東経由の天然ガス価格は割高である上に、ホルムズ海峡を通過するリスクがイラン核開発問題の交渉によって高まることが懸念される。311直後以来、ロシアからの輸入が増えて電力危機を乗り越えた。コストの安いロシア産天然ガスの輸入量をさらに増やしたいところだが、ウクライナ編入の制裁でそれができない。

 まず優先して手をつけなければならないのは温室ガス排出が多い石油を減らして、天然ガス燃料のコンバインド発電で置き換え、(温室ガス排出量の上限である)(1) 火力依存50%(以下)に抑えた上で、(2) 再生可能エネルギーを25-30%、原子力を残すなら20%上限あたりが妥当と思われるが、次世代型に置き換えていくことが前提となる。

 

 いずれにしても短期的には(中東以外から)シェールガスを輸入し、コンバインド発電で短期を乗り切るのが現実的のように思える。また天然ガスを廃熱利用で改質して水素を取り出して燃料電池発電にも期待したい。これまでの常識にこだわらず新しい技術でそれぞれの特徴を生かすことが問われている。将来のエネルギーミックスにおける原子力の比率については20%下限に拘らずに未来の世代が納得する賢い解をみつけて欲しい。

 

参考資料

「エネルギーミックスの選択肢の原案」の策定に向けて(資源エネルギー庁資料) 

「エネルギーのベストミックス」(関西電力)

日本にとっての最適なエネルギー・ミックスとは何か(豊田正和)

国際的な視点:日本にとってベストな エネルギーミックスとは?(クリストフ・フライ)

 

コメント   

# ピケテイ 2015年03月22日 14:56
原発予算を税金を使ったのだから、原発停止の燃料購入経費は原発予算からだすべきなのではないでしょうか。廃炉の費用も維持費を使って不足分を上乗せするべきでしょう。

経済産業省から資源エネルギー庁を独立させ、環境省と文部省の一部が合流して、エネルギー省」を設立するべきではないでしょうか。

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